おんな城主直虎 22話のあらすじネタバレと感想
NHK大河ドラマおんな城主直虎22話のあらすじネタバレと感想です。
あらすじのネタバレは放送開始前に、感想は放送開始後に追記します。
目次
おんな城主直虎 22話のあらすじネタバレ
「木を切る者の中に、何処かで見たことのある顔があるのですが…」
直之がひそひそと言った。
直虎は「ん?そうか?」と、とぼけてみたが、隠しきれず、大騒ぎになった。
「どこからどう見ても、あいつは処刑されるはずだった男ではないですか」
すでに龍雲丸たちは、井伊領土の山で作業を開始していた。
「気賀から連れて来た木こりたちは、以前、井伊の木を盗んで逃げ出した奴らのではないですか!」
直虎が「そんな者いたか?」と、方久に振った。
「さぁ…」
2人してとぼけている様子に、苛立った直之が最後の切り札を出した。
「ここに近藤様を呼び、顔を確かめてもらってもいいのですよ!」
さすがにそれは困るが、返事もできず黙っていると、六左衛門がぼそりと言った。
「大体、どこであの者たちを見つけたのですか?」
バツの悪そうな直虎の顔を見逃さなかった直之が「まさか!殿をさらったのはあいつらですか!」と、叫んだ。
六左衛門も驚き、半信半疑である。
「まともな人がすることとは思えません。全く、何を考えているのですか!」
遅かれ早かれこうなる事は覚悟していた直虎が、ついに観念した。
「まぁ、よいではないか。あの者たちの腕は確かだし」
「木は思った以上に良い値段で売れるのですよ」
方久が嬉しそうに言う。
商人にとっては、誰が木を切っていようが関係ないかもしれないが、直之たちにとってはそういうわけにはいかない。
「犯罪者を引き込んで、何かあったらどうするのですか!」
「悪さは一切しないと約束してくれた」
「ああいう奴らの精魂は、そう簡単には変わりませんよ!」
「暴れ者を手懐けて家来にする話もあるではないですか」
方久の言葉を追い風に、直虎が続けた。
「そうだ。そうだ。直之、屈強な家来たちができるかもしれないぞ」
どこよりも強い井伊家臣団を作ることが憧れの直之にとって、人手不足は大きな悩みの種であった。
そのため、あっさりと食いついた。
「それは…かなり上手くやらないと…」
「しかし、但馬様が認めてくださるでしょうか。罪人は死刑に処すべし!と強く言っていましたし…」
居合わせもしない政次に怯える様子の六左衛門。
直虎も、政次には、つい先日キツく言われたばかりだ。
「そこだよな…」
悩みに悩んだ末、いつものように南渓の力を借りることにした。
龍潭寺に出向いた直虎はさっそく相談を始めた。
「龍雲丸を寺の預かりに?」
「はい!寺の預かりとなれば、政次も口出しできないでしょう」
「まぁ、いい男だしなぁ。あの目がいいのぅ。目が」
南渓の言いたいことがよく分からず、直虎は隣できょとんとしていた。
「かなり独創的な思考の持ち主のようだし。まぁ、殿ももう大人だしのう」
そう言いながらニヤニヤと笑っている。
まさか!わたしが龍雲丸に想いを寄せていると…?!
急に恥ずかしくなった直虎は一気に赤面した。
「和尚様!聞いていたならわかるでしょう!わたしは領主たる者、奪うだけではなく与えなければならないと思い、仕事を与えただけです。木を切る腕だけでなく、様々な技や知恵を持
つあの者たちを味方につけておく事は、井伊のためでもあります。ただただ井伊の事を思ってのことです!」
「そこまで考えているのならば、変な小細工をせず、そのまま政次に伝えたらいいのではないか?」
確かに、小細工などしてもすぐに政次にはバレてしまう。
あの者たちの働きぶり
直虎はすぐに政次を井戸端に呼ぶと、龍雲丸たちのことを包み隠さず話した。
いつものように冷静に聞いていた政次が頭を抱えている。
深い沈黙と政次の態度に、言ったことを後悔しそうになる直虎に、政次は大きなため息を吐いた。
「どうして、わたしがお前にお伺いを立てなければならないのだ!」
あまりの緊張感に、逆に開き直ってしまった直虎に、今回は言いたいことも我慢して、政次が譲歩してくれた。
そうして、二人で伐採現場を見に行くことになった。
現場では、監視に来ていた六左衛門と、龍雲丸や力也たちが楽しそうに話していた。
微笑ましく見ている直虎の横で、政次は表情ひとつ変えない。
そこに、二人に気付いた六左衛門が駆け寄って来た。
「但馬が、皆んなの働きぶりを見たいというのでな。何を楽しそうに話していたのか?」
「それが…皆んなこっそりと指示を聞きに来るのです」
「こっそりと?」
「盗む時は大声で話すわけにはいかないでしょう。昔の癖が…」
六左衛門が、余計なことを言ってしまったと焦り、政次に目をやったが、相変わらず冷めた表情で現場を見ている。
どう思ってるのかさっぱりわからない。
とにかく、龍雲丸たちがよく働いてくれていることを伝えなければ…
「お!もう、小屋ができあがっている。仕事が早いなぁ」
すると、突然、政次が龍雲丸に近づき声をかけた。
直虎が慌てて互いを紹介した。
「この結び方は珍しいな」
政次が、木を結んでいる縄の結び目を指差して言った。
「これは船乗りの知恵で、固く縛れるのに解きやすいので」
「皆んな、船乗りか?」
「いや、金の発掘をしていた者や、木の仕事をしていた者など、様々です」
カジに力也、それに若くてぽっちゃりのゴクウ、眼帯をしたモグラ、それぞれが自分の特技を生かし上手く分業しながら、効率よく作業を進めている。
が、皆独特の風貌をしており、誰一人として真っ当な人間には見えない。
「…そうか。なかなかの働きぶりだな」
「本当に!皆んな盗賊なんてやらなくても…」
またも六左衛門が口を滑らせた。
直虎が六左衛門の脇腹を思い切り突いた。
「しかし、近藤様の目が光っている領土の境には近付かない方がいいな」
腑に落ちない顔の龍雲丸に政次が釘を刺した。
「井伊はお前たちをかくまってやっているのだ。何かあればすぐに引き渡されることを忘れるな」
「但馬、そんな言い方をしなくても…」
張り詰めた空気を切り裂くように龍雲丸は笑って言った。
「心配していただかなくても、いつでも姿は消せますから」
「それはありがたい」と言い、くるりと背を向け立ち去ろうとする政次を直虎が追いかけた。
その様子を見ながら龍雲丸は、六左衛門に尋ねた。
「どうして殿様が家老に気を使っているのか?」
「但馬様は、今川のお目付役だからな」
「ふぅん。窮屈だな」
いつの日か井戸端で、直虎が龍雲丸に「お前はどこにでもいけるのだな…」と羨ましそうにしていたのを思い出した。
政次に追いついた直虎は、必死に説明した。
「なぁ!あの者たちは凄かったであろう。きっと、井伊の役に立ってくれるはずだ!」
「殿があの者たちをきちんと管理できるのなら何も言いません」
「頭は絶対に、盗みはやらないと約束してくれたぞ」
「悪行は盗み以外にもたくさんあります」
「わかった。わたしも、十分に気をつけるようにする」
「ぜひ、そうしてください」
突き放すような冷たい言い方であった。
忘れかけていた胸のざわめき
翌日、直虎は庭先に米や酒、生活用品などを集めた。
「これを全て運ぶのですか?」
たけが聞いた。
「うむ。人間、腹が減ると良からぬことをしでかすからな」
そこに、ひょっこりと百姓娘が現れた。
「準備完了です!参りましょう!母様」
「おおっ?高瀬か!そんな格好をすると百姓にしか見えないな」
「そりゃあ、任せてください!」
何故か自慢げに胸を張った。
不思議そうな顔をするたけに「高瀬が盗賊を見たいと言うからな」というと、たけは悲鳴をあげた。
「ダメです!姫様!相手は獣のような男たちですよ」
「これなら姫には見えないでしょ」
「余計にダメです!気軽に手を出されてしまいます」
「大丈夫です。母様も行かれるんでしょう?」
「母様はもうか弱き乙女ではありませんから!」
たけには、少し言葉に気をつけて欲しいと直虎は思った。
「…では、行くぞ!六左!」
大きな杉の木がミシミシと音をたてたかと思うと、やがてユラユラと動き出し、地響きを立てながら勢いよく倒れた。
その様子を見ていた直虎と六左衛門は、思わず感動した。
「直虎様!わざわざ運んでくれたんですね」
声をかけてきた龍雲丸に、倒れた木を眺めながら「よく、あんなに上手く木が倒せるなぁ」と言う。
いつものごとく、自分でやってみたくてたまらないのである。
「…少しやってみますか?」
「いいのか?!」
「直虎様!危ないのでおやめください!」
青ざめる六左衛門の言うことなど全く聞かず、嬉しそうに龍雲丸の後をついて行く直虎。
仕方なく、六左衛門も後を追った。
やこの道具が大鋸で、これを二人でひいて木を切ります」
「ほう」
初めてみた道具を手に取ると、ずっしりと重かった。
「慣れてしまえば、重さも扱いも大して難しくありません。」
早速、六左衛門と挽いてみたみたが、ちっとも上手くいかない。
「おい!六左、ちゃんと挽け!」
「やっているつもりなのですが…」
見かねた龍雲丸が背後から突然、直虎の手をつかんだ。
「いいですか?手はこのようにして…こう!聞いてますか?こうです!」
コツを教えてくれているだけなのだが、直虎の耳には何ひとつ入ってこない。
古かろうが乙女を卒業していようが、中身はまだまだ初々しい女の子のままなのである。
直虎が固まっている間に、龍雲丸は直虎の手をつこんだまま、大鋸を強く挽いた。
「歯が入った感触わかりましたか?」
「うむ」
しっかりとした手応えを感じた。
興奮して振り向くと、目の前に龍雲丸の顔があり、心臓が大きく脈打った。
直親のような綺麗な目鼻立ちの美少年という感じではないが、力強い目力に男らしさを感じる顔立ちだった。
「わかりましたか?」
「あっ、う、うむ、わかった」
「では、六左様も今の感じで〜。せーのっ」
上手く挽けているようであるが、ずっと龍雲丸が背中に密着し、手を握られているせいで、変な汗が全身から噴き出す。
これはひとえに南渓のせいである。
妙なことを言うから意識してしまうのだ。
「…うわぁぁぁ!」
たまらず、龍雲丸の手を振りほどき、胸のモヤモヤも振り切ろうとした。
赤面する直虎を二人が不思議な顔で見ている。
「もしかして、手首を痛めました?ちと失礼!」
龍雲丸が再び直虎の手を取ろうとした瞬間、思い切りその手をはたいた。
「大丈夫、大丈夫!」
逃げるように走り去った直虎は、気付けば川辺まで来ていた。
「卑しい心め…修行によりそのような煩悩は消えたと思っていたのに…」
ひとりでぶつぶつ言っていると、お米を研いでいたモグラが、直虎に気付いた。
「あ、色々と頂いたようで、ありがとーございます」
「慣れない土地で色々と大変だろう。必要なものがあったらいつでも言ってくれ。よし私も何か手伝おう」
「とんでもない!水も冷たいですし」
「なんのことはない。わたしは禅僧でもあるのだ」
モグラと一緒に米を研ぎながら、直虎は思い出し、尋ねてみた。
「そなた達の中に、かなり読み書きの達者な者がいるだろう?あれは…」
「ああ。それは頭ですよ。頭は侍の子供だったようで」
予想もしない答えに、直虎は驚いた。
「頭が…侍の子供がどうしてこんなことに…」
「皆んな色々と複雑なので、お互いのことはあまり話さないからよくわかりませんが」
皆知られたくない事情があることを察した直虎はそれ以上聞かなかった。
その夜、なかなか寝付けない直虎は「武家は大泥棒だ!」と言った龍雲丸のことを考えていた。
武家の子供が何故…もしかすると、亀のように追われ、また、亀のように戻ることもできず…
そう思うと、井伊に戻って来た時の直親と、水場で会った時の龍雲丸が重なるような気がした。
井伊を守るため、亀の代わりに…とすら、思えてくる。
直虎を心配した亀が、今度は龍となって現れたのかもしれない。
直虎の妄想はどんどん膨らんでいく。
最後に直親に抱きしめられた時の温もりと、昼間、背中に感じた龍雲丸の温もり…
よからぬ妄想が暴走しかけた瞬間、「私たちほスケコマされたのです!」と言う、しのの声が蘇り、ようやく我に返った。
布団の中に潜り込み、固く目を閉じ、邪念を断ち切ろうとした。
勃発する数々の事件
数日後、また荷物を届ける準備をしながら、六左衛門が直虎も視察ついでにまた行ってみないかと誘った。
「…特に問題がないなら、行くことないだろう」
龍雲丸と顔を合わせるのは、なんとなく気がひける。
勝手に意識しているだけなのだが…
「頭が気にしてましたよ」
「えっ!頭が?何を気にしていたのだ?」
直虎が食い入るように聞き返したとき、たけがやって来た。
「あの…百姓の奥さんが来ていますが…」
なにやら嫌な予感がした。
「と、賭博場?!」
「気賀から来た輩が、町外れで夜になると賭博場を開くようになり、うちのバカ夫がそこに入り浸ってしまい、すっからかんに…」
瀬戸村でも祝田村でも、変な奴らがうろついていると噂になっていたようだ。
それが、直虎が連れて来た、気を切り出す者たちで、以前は盗賊であってことまで知れ渡っている。
その夜、賭博場の確認に直之を行かせた。
翌朝、直虎の前に連れてこられたのは、力也とモグラであった。
「まぁ、そのくらいいいんじゃないですかね」
責任者でもある龍雲丸を呼びつけると、大したことないような言い方をした。
「だれが、勝手に賭博場を開いていいと言ったか!」
勢い任せに怒鳴りつける直之を制しながら、直虎が順を追って説明していった。
「頭。井伊の者たちはこういうことに慣れていないため、のめり込みやすいのだ。一年ほど前までは、暴動が起こりそうなほど不安定な状況だったのだ。それを苦労してなんとか収め、ようやく落ち着きを取り戻して来たところなのだ。だこら、賭博など、また波風が立つようなことは控えてほしい」
「俺たちがやらなくても皆んな陰でやってるでしょうけどね」
「控えてもらいたい」
「はいはい。わかりましたよ!お殿様」
「なんだ!その口の利き方は!」
直之が飛びかかろうとするが、龍雲丸は知らん顔で、二人に「もうやるな!」と言いながら連れ帰った。
「悪者はしょせん悪者…」
「そう決めつけるな」
なんともすっきりしない終わり方であった。
しかし、この後も次々と事件が続いたのである。
「俺の酒がなくなった!」
八助が空になった水瓶を抱えて、凄い剣幕で駆け込んで来た。
再び、龍雲丸を呼び出したが、誰も飲んでいないという。
「じゃあ、なんでなくなるんだ!」
「誰かが飲んだからだろうなぁ」
龍雲丸と一緒に来ていたカジが口を開くと、あたりに酒の匂いが充満した。
「お前かあぁ!!」
八助が飛びつき、そのまま庭先で大喧嘩となった。
その数日後には、富介が泣きまくる娘を連れてやって来た。
山にいる男に追い回され、襲われそうになったという。
人相を聞いてみると、どうもゴクウに似ている気がしたので、直虎はいてもたってもいられず、直之とともに採掘現場に向かった。
直之がゴクウに詰め寄るが、ゴクウは知らないの一点張りである。
ゴクウが嘘をついているようには思えないが、娘が作り話をしたとも思えない。
直虎が困惑していると、そこに怒り心頭のカジがやってきた。
「あのさぁ!何でもかんでも俺たちのせいにするっていうのはどういうつもりだよ!」
龍雲丸がカジを止めるが、カジの怒りは収まらない。
「俺たちを疑う前に、まず、そいつらが嘘をついていないかどうか調べたらどうなんだよ!」
「ただの百姓と盗賊がいたら、まず盗賊のお前たちから疑うのは当たり前だろう!」
「よせ!」
直之を一喝する直虎の声で、その場の空気が凍りついた。
それを切り裂くかのように龍雲丸が口を開いた。
「おっしゃることはごもっともですが、それならばそもそも自分たちを呼び寄せるなって話ですよ」
「な、なんだと…」
「こちらからすれば、呼ばれたから来てやったのに、なんでこんな悪者扱いされて嫌な思いしなきゃいけないんだか。今日までの駄賃をもらえれば、こっちはここで辞めても構わないの
で、そっちで話し合ってもらえませんかね」
直虎は返す言葉が見つからなかった。
翌日、直虎は評定を開き、皆の意見を募った。
「思い切って、盛り場を作るのはどうでしょう」
方久が案を出した。
「あの者たちが騒ぎを起こすのは、遊べる場がないからです。盛り場を作れば、そこで遊べるため、騒ぎも起こさなくなるでしょう。さらに場代などの収入も見込めます」
「たかが出稼ぎのために、そこまでする必要はないだろう!」
声を荒げる直之の横で、政次が静かに口を開いた。
「奥山様、あの者たちはあとどのくらい井伊にいる予定ですか?」
「えー、あと、ひと月ほどかと」
「では、そのひと月の間に技を盗めばいい」
「技を…盗む?」
首をかしげる直虎に、政次は続けた。
「井伊の者にできる人間がいれば、次からはよそ者に頼まなくていい。冬場に畑仕事のない百姓にやらせれば、小遣い稼ぎにもなるだろう」
「確かに、井伊を豊かにすると言う点ではそれが最も理にかなっていますね」
素早く頭の中で算盤を弾いた難しさが賛成した。
「これで全て丸くいくでしょう」
政次は、感情に流されることなく全て割り切ってしまうが、直虎はそんな風に物事を片付けられない。
「待ちなさい!それではまるであの者たちの技術を盗むためだけに呼び寄せたようになるではないか」
龍雲丸たちにしてみれば、気分のいいものではないだろう。
「見せれば技は盗まれる。当たり前のことではないですか」
「し、しかし!それでは…ここまでの縁になってしまうではないか」
「ここまでの縁だとして、何か困ることでもありますか?」
「私はあの者たちを使い捨てるつもりで呼び寄せたのではない。彼らの持つそれぞれの特技は必ず井伊の役に立つ。与え与えられ、持ちつ持たれつ、あの者たちと助け合う間柄になりたいのだ。そうすれば必ず井伊の民にとっても大きな助けとなるだろう」
「他でもないその井伊の民が苦情を言ってきているのです。さらにあの者たちは、駄賃さえもらえば出て行っても構わないと言っているでしょう。助け合い、縁をつないでいきたいと思
っているのは、殿だけではないですか?」
直虎は、ぐうの音も出なかった。
政次の言う通り、こだわっているのは自分だけか…
奪い合わなくても生きていける世界など、やはり不可能なのか…
問題解決への糸口
その日の夕方、直虎は六左衛門とともに伐採現場に向かった。
龍雲丸たちに解雇を告げるためである。
小屋の近くまで来た時、大きな怒鳴り声が聞こえた。
「盗みはするなと、あれほど言っただろうが!」
龍雲丸がカジを殴り飛ばした。
2人は慌てて木の影に隠れ、様子を伺った。
「何してんだ!てめえら!このやろう!!」
続けざまにゴクウと力也もぶっ飛ばされた。
材木の山が崩れている様子から、どこかに横流ししようとしたことがわかる。
龍雲丸は、知らなかったのだろう。
「盗もうが盗むまいが同じじゃないですか!どうせ最初から犯人扱いなんだから」
赤く腫れた頬を抑えたゴクウが、泣きながら言った。
「だからって、盗んでしまったら、やっぱり!と言われるだけだろうが!」
右腕であるカジも、不満をぶちまけた。
「井伊の奴らなんか信じていいのかって言った時、頭は言いましたよね!あの尼小僧はクソ侍とは違うって。俺たちのことをひとりの人間として考えてくれるって!」
陰で聞いていた直虎は、うれしく思うと同時に、申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
「どういうことですか!これじゃぁ話が全く違うじゃないですか」
「わかったよ…もう二度とこんな話受けたりしないから、勘弁してくれ」
全員から言い寄られた龍雲丸は、ガックリと肩を落として去って行った。
出て行くタイミングを失い木陰に潜んでいると、六左衛門が何かに驚き直虎にしがみついてきた。
直虎も一瞬驚いたが、猪に気づくと「ただの猪だ。離れろ」言った。
おびえきって正気を失い、しがみついてくる六左衛門を見ているうちに、直虎はあることに気がついた。
そうか、これもそういうことかも…
であれば、まだ希望が持てる!
やってみる価値は十分にありそうだ。
「よしよし、六左、頼みを聞いてくれ」
「なんと!そんなかっては許されません。なぜそのようなことに」
解雇延期の決定を聞いた直之は、頭から湯気を出して怒っている。
「昨日、山の中で不気味なものことに驚いて飛び上がったのだが、実際はただ猪が通りかかっただけだったのだ」
直虎は思ったのだ。
井伊の村人たちと流雲丸たちの関係もこれと同じなのではないかと。
「遠くから見るから正体がわからず恐怖に感じ、思い違いが生じる。お互いに近づいてしっかりと見れば、その誤解が簡単に解けると思うのだ」
直虎の勝手に怒り狂っていた直之や、龍雲丸たちの小屋にひとりで使いにやらされた六左衛門、最初から否定的だった政次にさえ、直虎の強い想いは伝わった。
「もとはわたしか呼んできた者たちだ。わたしにこの思い違いを解かせてもらえないだろうか」
「もし、思い違いなどなかったらどうするのですか」
そこは情に流されず、家老としてしっかりと聞いておかなければならない。
「そのときは…皆の意見に従う」
直虎はハッキリと答えた。
やってみなければわからない・・・吉と出るか凶と出るか
「なんでぇ、こんな奴らと一緒に狩りをしなきゃいけないんだ!」
腰に芋をぶら下げた八助と角太郎が文句を言う。
「そりゃあ、こっちのセリフだ!」
そもそも直虎を信用していないカジは、「このごに及んでまだ頼みごとかよ」と、怒っている。
穴掘りの道具を担いだモグラも、しぶしぶついてくる。
「仕方ないであろう!殿が猪を食べたいとおっしゃるのだから!」
お目付役の直之が怒鳴る。
誰一人として気乗りしないまま、山中をさまよった。
「おっ、ここは出そうだな」
急にモグラが立ち止まった。
「わかるのか?」と直之が聞くと、猪が体をこすった跡があると言って、泥のついた木を指差した。
泥を体に浴びせてから、寄生虫や汚れを泥と一緒に木に擦り付けて落とすらしい。
「へぇー。知らなかった!」
八助と角太郎は感心した。
村では、畑を荒らしにくる猪を捕まえる。
「猪は芋が大好物だから」と、腰に下げた芋を八助が見せた。
「この芋でおびき寄せて、食ってるところを後ろから襲うんだ」
角太郎がぶっ叩く真似をすると、カジが呆れたように笑った。
「おっかねえなぁ。井伊の奴らは。なにも、叩かなくても…なあ」
モグラもうなずき、道具を持ち出した。
「叩いたりせず、穴に落とせばいい」
同じ頃、館では女性陣がせっせと猪鍋の準備をしていた。
直虎はうまくいっているか気になってヤキモキしている。
「本当にうまくいくのですかねぇ…」
半信半疑のたけに、祐椿尼が微笑みながら言った。
「人は共通の敵を前にすると一つになるものです」
やがて日が傾き始めると、あちこちから村人たちが集まってきた。
直虎ご声をかけておいたのである。
鍋の準備も整い、あとは猪を待つだけとなった。
そこへ、力也とゴクウがやって来た。
「よく来てくれたな。あれ?頭は?」
「後で来ると言ってました」
ど、その時、「戻りました!殿!」と、直之の声がした。
見ると、カジの背中には猪ではなく、角太郎が背負われていた。
怪我でもしたのかと心配して駆け寄ると、五人は顔を見合わせて笑い出した。
「なにがどうしたのだ?」
訳が分からず戸惑っている直虎に、直之が笑いをこらえながら言った。
「猪を落とすための穴を掘ったまでは良かったのですが…結局落ちたのは仕掛けを忘れたこいつだけで!」
「そうそう。角しか引っかからなかった」
カジも爆笑している。
「猪よりバカだな、お前は!」
八助が頭を軽く小突くと、角太郎が照れ笑いした。
想像もしなかった朗らかな光景に直虎は呆然としていた。
それを角太郎は直虎が怒っていると勘違いしたのか「直虎様!自分のせいで猪が獲れず、すみません」と、申し訳なさそうに言った。
「…おう。それは本当に残念だ」
そう言って直虎は思い切り笑い飛ばした。
猪鍋は完成しなかったが、庭のあちらこちらで、村の者と山の者が一緒に飲み食いしている。
喜びのあまり酒に溺れた直虎の失態
和気あいあいとする光景を眺めていると、突然、カジが怒鳴りだした。
「うるせぇなぁ!本当に飲んでないって!」
「ふううん、じゃあ、誰がどぶろくを飲んだんだよ!」
言い争いになりかけた時、近くにいた甚兵衛が仲裁に入った。
「犯人は和尚様ということで、いいじゃないか」
南渓が、わしか?!と、妙な顔をしていると、「あ、あの…」と声がした。
福蔵だ。
その手には水瓶が握られている。
皆の注目を浴びながら、びくびくとその瓶を差し出した途端に、カジと八助が「お前かぁああ!」と叫んだ。
「ごめん…謝ろうと思ったけど、八助がやたらと怒ってるから言い出せなくて…」
「バカヤロー!言い出しにくかったじゃないぞ!」
「おかげでこっちは大変だったんだぞ!」
そのうち怒るのもバカバカしく思えてきて、二人とも顔がにやけてきた。
直虎も安堵していると、ゴクウが声をかけてきた。
すると、側にいた富介の娘が怯えるように直虎の後ろに隠れた。
「どうした?」
「これ…あんたの物じゃねえか?」
ゴクウが古びたお守りを差し出した。
「あんたが歩いてた付近に落ちてたから」
「もしかして、これを渡そうと思って追いかけたのか?」
「渡そうとしただけなのに、逃げるから…」
「わ、悪かったぁ。許してやー」
娘は申し訳なさそうに手を合わせた。
これもまた、勝手な思い込みによる誤解であった。
一部始終を庭の隅で見ていた龍雲丸に気付いた南渓が声をかけたが、黙ってじっと直虎を見つめている。
「どうかしたか?」
「いやー、尼小僧様は不思議な方だなと思って。人を巻き込んでいくというか、取り込んでいくというか…」
「この井伊の地の始まりであるご初代様は拾われ子だったのだ。そして、その拾われ子がどんどん仲間を増やしていき、今の世に至っている」
「ご初代様とやらは、あんな風だったんですかね?」
「わしとて、会ったことはないからなぁ」
龍雲丸の目には、周りを明るく照らす直虎の笑顔が眩しくてたまらなかった。
「お!頭!やっと来たー」
モグラの声に直虎も龍雲丸もハッとした。
「来て来て!色々と思い違いが解けたんだよ」
「聞こえてたぞ」
龍雲丸は緊張で固まっている直虎の元へ歩み寄り、一礼すると「今度は必ず猪を取って来ます」と言った。
今度?
次があるのか!と直虎は眼を見開いた。
「仕事、続けさせてもらっていいですか?」
とても優しい目をした龍雲丸。
「も、もちろん!よろしく頼む!」
直虎の顔もとても幸せそうであった。
そんな二人を遠くで見ていた政次は、何かを消し去るかのように酒を煽った。
そうして一人静かにその場を立ち去った。
どれほど美味しい酒だったのだろう。
直虎は完全に出来上がっていた。
絡まれないよう皆、距離を置いていたが、龍雲丸がしっかりと捕まっていた。
なんとか腰を上げようとすると「逃げるな!わたしはしつこいぞー。どうせそなたも…どこかに子供がおるのだろう…」
訳がわからない。
押し問答していると急に直虎が龍雲丸の腕を引き寄せた。
「お前はこのまま井伊に残れ!」
酔ってはいるがその瞳は真剣そのものだ。
「わたしのものになれ!」
龍雲丸はその真剣な眼差しから目を離せずにいた。
以上、おんな城主直虎22話のあらすじネタバレでした。
以下は実際に放送を見ての感想です。
おんな城主直虎22話の感想
材木の商いを手伝ってもらうことになりましたが大反対の家臣たち。
何か悪いことがあれば盗賊たちの仕業だと思われてしまうのも不憫なものです。
誤解を生まないためには一緒に働く者同士密接に関わっていくことが大事ということでしょう。
今回は嫉妬する政次が可愛らしい回でもありました。
様々な知識で材木の仕事をこなす
武家を快く思っていない盗賊の頭・龍雲丸と再会した直虎。
盗賊団の木を切る技術に、井伊の材木業を手伝ってもらうことにしました。
大反対する直之たちですが、一番の難関は政次ですね。
彼を説得できなければどうにもなりません。
和尚の言う通りちゃんと伝えて説得すべきでしょう。
盗賊たちの働きぶりを見に行くと、しっかり仕事をしている様子。
船乗りや金山で働いていた者たちの知恵を使い、仕事を効率よくこなしているのですね。
ただ盗賊なので悪さをしないと信じ切ることのできないという政次の意見ももっともです。
高瀬は百姓の姿で賊を見に行こうとしますが、若い女の子が行くのは危険すぎます。
直虎はトウがたっているから安心のようです。
目の前ではっきり言われるのも何だか可哀想な気がしますが。
龍雲丸が武家出身であることを知る
山に向かうと屈強な男たちが木を切り倒しています。
盗賊とはいえ仕事をする姿は立派なものです。
木を切るコツを教えるため直虎の後ろから抱きしめるように手を回す龍雲丸。
この露骨な行動はわざとらしいですね。
直虎も男に免疫がないので耐え切れず逃げてしまいました。
目下と思っていただけになめていたのでしょう。
盗賊仲間から、龍雲丸が元々も侍の家の子であることを聞かされます。
だからあんなに立派な文を書くことが出来たのですね。
彼にも深い事情があるのかもしれません。
武家の子が武家を泥棒呼ばわりするなんて。
そんな事情が亀之丞と重なって見えてしまったのですね。
しかし、井伊が材木の商いを始めることを知った近藤たちは材木を盗んだ盗賊たちを使っている事に勘付いてしまったようです。
材木を切る知識がある人間といえば限られてきますよね。
やはり盗賊たちですから博打場を勝手に開いていました。
博打にハマった百姓たちの女房たちが困り果てて直虎に助けを求めます。
いつの時代も博打にハマると恐ろしいもの。
その後も、勝手にお酒を盗まれることに。
泣きながら父親に連れて来られた娘は、盗賊に襲われそうになったと訴え出ました。
この気の弱そうな男の子は完全に冤罪にしか見えませんが。
井伊と盗賊たちの関係が険悪になってしまいます。
盗賊たちの技を盗み、百姓たちに任せようと言う政次。
今回だけの仕事で技を盗めば用済みとは流石に酷い。
治安を守るためには仕方ありませんが、本当に彼らがやったのかを確かめなければなりません。
盗賊たちへの恐れを取り払う
どうすべきか悩んでいる直虎が目撃したのは盗みをしようとした仲間たちを殴る龍雲丸の姿でした。
盗んでいないのに盗人扱いされたことに腹を立て本当に盗みを働いてしまおうとしたようです。
直虎を信用し、仲間たちを説得したのに龍雲丸もつらい立場でしょう。
直虎はイノシシの鳴き声で何かを思いついたようです。
どうやって彼らの誤解を解くのか。
盗賊たちともっと密接にコミュニケーションをとれば、彼らの本当の姿が見えてくると言うわけなのですね。
彼らに食事を振る舞うため準備を始めました。
盗賊たちの知識はイノシシ狩りにも長けているようです。
一緒にイノシシ狩りをすることで百姓たちと打ち解けたように見えました。
みんなで食事をしていると、やはり盗まれた酒の話になってしまいます。
そこへ罪の意識に苛まれた百姓の一人が、自分が盗んだと名乗り出ました。
疑われたのは災難でしたが誤解が解けてよかったですね。
百姓の娘を襲おうとした盗賊の男の子も、落としたお守りを返そうと追いかけていたようで。
全てが他愛もない勘違いでよかった。
そんな光景を見て、直虎の不思議な魅力に改めて気づかされた龍雲丸。
しかし、和気藹々としているのに一人だけ面白くなさそうな政次です。
これは嫉妬というやつなのでしょうか。
酒を飲む直虎は、実はかなり酒癖の悪い事が発覚しました。
直虎が呑気にお酒を飲んで楽しんでいる間に政次を訪ねてきた近藤。
今度は何を言い出すのかと思うと怖いですね。
完全に酔いが回っている直虎は「われのモノになれ!」と凄い発言をしました。
家臣になれという意味でしょうが、言葉だけ聞くとかなりの爆弾発言ですね。
この先、井伊と盗賊たちの関係がどうなっていくのか気になります。