おんな城主直虎 21話のあらすじネタバレと感想
NHK大河ドラマおんな城主直虎21話のあらすじネタバレと感想です。
あらすじのネタバレは放送開始前に、感想は放送開始後に追記します。
目次
おんな城主直虎 21話のあらすじネタバレ
直虎たちは、気賀でも有名な中村屋という大きな店を訪ねた。
「ご領主様自らわざわざお越しくださるとは…」
恐縮した店の主人である中村与太夫が出迎えてくれた。
「百聞は一見にしかず。まずは自分の目で見て感じることが大切かと」
「噂には聞いていましたが、本当に尼御前様でいらっしゃるのですね」
挨拶もそぞろに、方久が本題を切り出した。
「本日は中村様に布の商売についてお伺いしたいのですが…井伊では綿花を栽培し、そこから布を作れるようになりました。それで、この布をどこでどのように売るのが良いか教えてい
ただきたいのです」
「井伊の民が一生懸命に作る品物なので、出来るだけ良い道を探したいと思っている」
井伊の布が幅広く流通するように願い、直虎が力説する。
「なるほど…この気賀の町が商売の町として繁栄したのは、浜名湖に面しており、一度にたくさんの荷物を船で運ぶことができるからです。また浜名湖は海にもつながっていますので、ときには外国でさえ売先を求めていくことができます」
「外国?」
与太夫の話を真剣に聞いていると、あっという間に二時間ほどが過ぎていた。
「売り先が広くなるのはいいことだが、布は軽くてかさばらないから陸路でもそんなに費用はかからないということか」
「かなりの量がないと船は送料が、高くつきそうだな」
直虎が方久と話しながら歩いていると、後ろをついてきていたはずの六左衛門の姿が消えていた。
慌てて後ろを振り返ると、なんとも奇妙なお皿のようなものの前で立ち尽くしていた。
「なんだこれは?」
不思議がる三人に、方久が説明してくれた。
「首元につける飾り物ですよ。南蛮のものです」
興味津々の直虎は、付けてみたくてうずうずしている。
「尾張の織田様も外国と取引をしているようですし、これからは外国のものがどんどん日本にも入ってくるでしょう。つまりは、日本のものもどんどん外国で売られるということです」
直虎は全く聞いていないどころか、飾りをつけてはしゃいでいる。
似合っているかどうか、わからないなと言いながら、飾りを外そうとした時、子供が勢いよくぶつかってきた。
謝りもせず、駆けて行ったので、六左衛門が「行儀が悪いですな」と、眉をひそめた。
と、次の瞬間!
「ない!ない!ない!」
「は?」
「財布がない!」
怒り心頭の直虎は、無我夢中で追いかけ、見事にとっ捕まえた。
「おい!今わたしの財布を盗んだであろう!」
「し、知らない」
「嘘をつくな!正直にここで返せば許してやるから、出せ!」
鬼の形相で詰め寄る直虎に、観念した様子の男の子は懐から財布を取り出すと、直虎には渡さず、放り投げた。
そこに、仲間の子供が駆けてきて、財布を受け取ると、逆方向へと逃げ出した。
「逃すもんか!」
直虎はその子供を全力で追いかけた。
観念したのか、町外れで子供は足を止めた。
「返せ!それは井伊の民の努力の結晶だ!返せ!」
詰め寄る直虎。
と、その時、頭に衝撃を受け、直虎はうずくまった。
外しそびれていた先ほどの店にあった飾りがひらひらと舞い落ちた。
「ちゃんと振り切ってから戻ってこい!」
後ろから現れた大男が、子供にげんこつしながら言った。
「これは何者だ?」
意識を失った直虎をまじまじと覗き込んでいた。
「え!直虎様が消えた?」
六左衛門と方久は大慌てで、中村屋に助けを求めた。
六左衛門が道端で拾った飾りを手に泣きそうな顔をしている。
暗くなるまで手を尽くして探し回ったが、見つけることができず、一旦戻ってきたという。
「なれない町で迷い子になっているのかも…」
与太夫は、事の重大さを察し、申し出た。
「気賀には、悪い連中も沢山いるので、すぐにお捜しましょう」
「ありがとうございます!六左殿、すぐに井伊に連絡を」
しょげ返る六左衛門に方久が「そんな暇はない!早く井伊に!」と、叱咤する。
思いがけない再会
寒さで目を覚ました直虎は、全く見覚えのない場所にいた。
窓ひとつない穴蔵のなかで、手足を縛られていた。
頭がズキンとした瞬間、殴られたことを思い出した。
あちこちに置いてある荷物に近付こうとした時、扉が開き、財布を盗んだ子供達が入ってきた。
「ここはお前たちの家なのか?どこだ?答えよ」
しかし、二人は黙ったまま、食事を置いて去ろうとした。
頭にきた直虎は、怒鳴り散らした。
「わたしは井伊の当主だぞ!このような事をしてただで済むと思うなよ!すぐに井伊の者たちが押し寄せるからな」
子供達は気狂いを見るような目で見ている。
「早く上のものを呼べ!話せば命だけは助けてやる!」
直虎を拉致した大男の力也たちは、直虎が監禁されている部屋の上で食事をとっていた。
山中にあるこの小屋は、連中のたまり場である。
「頭!どうでしたか?」
帰ってきた男に、たまきという少女が駆け寄った。
「ちっと脅してやったらすぐおさまったよ。こっちは変わりないか?」
頭…例の男である。
直虎が情けをかけたあの男は、盗賊一味の頭だったのだ!
「それが、上玉が転がり込んできたんだ」
「?」
「男か女かよくわからない変なやつだけど、上玉には違いない」
意気揚々と説明する力也に、少しばかり嫌な予感のした頭。
そこに、子供達が続けた。
「本当に変わった奴で、自分は井伊の当主だなんだとか言ってて…」
男は慌てて地下牢に向かった。
「どうしたんだよ頭、急に。何かあるのかよ」
慌ただしい足音とともに聞こえてきたかと思うと次の瞬間、がらりと開いた扉の向こうに、よく知る男の顔があった。
「お、お前!」
「やはり…」
またも、このような形で再会するとは思いもよらず、お互い絶句した。
「え?知り合いなんですか」
「これは井伊の領主である直虎だ」
「えええええーーー!!」
「前に、男か女かわからないような変な奴がいると話しただろう。まったく、厄介なものを連れて来やがって」
ため息まじりに直虎を見る。
「湖に捨ててきましょうか」
頭の右腕である長身の男カジが言った。
「ここを知られてしまったからには、もうそれしかないでしょう。ここで口を封じておかないと、大変なことに…」
「そ、そんなことしてみろ!お前らみんな匹捕まえられて処刑されるぞ!」
青ざめながらも強気な発言をする直虎に、男たちはクスクス笑っている。
「何がおかしいのだ!」
「いや、御無礼を、お殿様」
前回までと立場が入れ替わった男が、嫌味っぽく言った。
「しかし、殿ももう少し自分の立場をわきまえた方が良いかと思いますね。井伊に戻れば領主様かもしれませんが、ここではただの女の子です。一人じゃ何もできないでしょう」
頭に血の上った直虎が、叫びちらそうと口を開くと、いきなり口の中に握り飯を突っ込まれた。
「まぁ、とりあえず、しばらくおとなしくしていて下さい」
口をモグモグしながら騒ぐ直虎を置いて、男たちは去っていった。
カジは、殺してしまうのが一番だと言う。
確かにその通りだとわかっているのだが、男は腕組みをして考え込んでいる。
「女を殺すと言うのも、あまり気分が乗らないしな」
「あんなうるさい女、売ることもできませんし」
「じゃあ、俺の女にでもするか」
「何言ってるんですか」
そんな話をしていると、昼間に揉め事を片付けてやった店のおかみがやってきた。
「中村屋が人を探しているようだよ」
女の使い道は決まった!とばかりに、男はカジ顔を見合わせた。
事件解決への糸口
夜通し走り続けた六左衛門が、明け方になってようやく井伊に戻り、直虎の行方不明を報告すると、大騒ぎになった。
すぐに政次と直之が招集され、祐椿尼と高瀬も同席した。
「まだ、何かあったと決まったわけでは無いのですが」
青ざめる六左衛門に、直之が勢いよく詰め寄った。
「夜が明けても戻られないなんて、何かあったに決まっているだろう!捜索はしてないのか?!」
「中村屋に探してもらっています」
「中村屋?」
祐椿尼が、いぶかしそうに聞き返した。
「商人などに?どうして気賀の侍に頼まないのだ!」
「気賀は商人の収める町で、侍がいないのです」
そこに、弥吉に連れられて、方久が転がり込むようにやってきた。
「方久殿!殿は?殿は見つかりましたか?」
「まだ見つかりませんが、これが中村屋に届きました」
方久の手にあった直虎の財布と文書を見た祐椿尼が、驚愕している。
「母上のものですか?」と尋ねた高瀬に、祐椿尼がうなずいた。
間違いなく直虎のものである。
慌てて文書を読み上げる。
『殿の命と引き換えに、銭百貫を明日中に地図で示した場所に届けること。これに応じる場合は中村屋の店先に赤い旗を立てるべし』
意外ときれいな字で書かれており、場所は山の中を示していた。
「とりあえずは、赤い旗を立て応じるようにしてはいかがでしょう」
ずっと静かに様子を伺っていた政次が、初めて口を開いた。
「ダメだ!こんなものに折れてはいけない!武士の名が廃る!」
怒鳴り散らす直之を冷ややかに見ている政次。
「受け渡しの場所に、必ず人が来るはずです。そこを捕まえれば良いのではないですか」
「ああ、なるほど」
「こんな簡単なこと、どうして思いつかないのか、逆に不思議でなりませんが」
馬鹿にされ、さらに怒り心頭の直之を置いて、政次は静かに去っていった。
「殿がいなくなったと言うこの一大事に、あの落ち着きぶりはなんだ!」
「しかし、良い案を出してくださったではないですか…」と、六左衛門がかばうように言った。
「自分の賢さをひけらかしたかっただけだ!」
直之の大声が響き渡る廊下を歩きながら、政次はふと足を止めた。
「…和尚様に頼んでおこう」
直虎は大泥棒?!
その晩、中村屋の様子を見に行った手下が、たまり場に駆け込んだ。
「頭!赤い布が出てましたー!」
「案外とちょろいもんだな」と、力也。
「じゃあ、尼小僧の様子でも見に行くか」と、男が腰を上げた瞬間、「お頭!尼小僧が!!」と、食事を運んでいた、たまきの声出した。
慌てて降りていくと、手足の縄をほどき、自由になった直虎が、男の子の首に短剣を押し付けていた。
どうやら、近くにあった荷物を蹴り倒し、中にあった短剣を取り出したようだ。
「わたしをここから出せ!で、でないと、こ、この子の命はないぞ!」
「どうぞ。お好きに。身寄りのないガキですから」
短剣を持つ手が震えているのは見通されている。
「いいのか!本当に、やるぞ!」
「はい、どうぞ」
と、直虎がひるんだ瞬間、男の子は直虎のお腹に一撃を入れ、離れた隙に男の所へ駆け寄った。
「これが尼さんのすることか」
「うるさい!」
お腹を押さえ、うずくまりながらも威勢だけはいい。
「おい。あれ運べるようにしておいて」
男が荷物でも運ぶかのような言い方で、力也に指示した。
「おまえ!どうして、こんなひどいことをする!どうして、盗賊なんかをしているんだ!頭も良いし体も丈夫そうだ。普通に働く道なんていくらでもあるだろうが!」
「あんたに言われたくないね。領主なんか、泥棒なんてもんじゃない!大泥棒だ!」
…領主が、泥棒?
意味のわからなかった直虎は、戸惑いながらも聞き返した。
「どういう意味だ?」
「そのままの意味だよ」
男の子を連れて出て行こうとする男に「おい!頭!どういう意味だ!きちんと説明しろ!」と、しつこく叫んでいたが、力也に腕をひねりあげられ、大人しくなった。
翌日、引き渡し場所に連れていかれた直虎は、目隠しをされ、両手足を縛られ、口には布を突っ込まれ、柱にくくりつけられた。
「もうすぐ帰れるよ。よかったな」
男が直虎に話かけてきた。
直虎は何新モゴモゴと口を動かもうすぐ帰れるよ。よかったな」
男が直虎に話しかけてきた。
直虎はなにやらモゴモゴと口を動かしていた。
男は「もういいか」と言いながら、布を取ってやった。
すると、直虎は「どうして私が泥棒なんだ?」と、言った。
男は驚いた。
命乞いをするかと思っていたら、第一声が昨夜の話の続きである。
「ただの勢いで言っただけだ」
「そんな言い方ではなかった。なぜ、わたしが泥棒なんだ?」
「しつこいな!」
「なんでだ!答えろ!」
あまりのしつこさに、ついに男が折れた。
「子供にでもわかる話だろ。百姓が作ったもの全部取り上げていくじゃないか」
「年貢を取るのは当たり前だ。井伊の土地を貸しているんだから」
「なんで、あんたの土地と決まってるんだよ」
「え?」
「なんであそこが井伊のものになってるんだよ」
「それは…鎌倉の公方様から任されたからだ」
「つまり、それが泥棒の始まりだろ!あんたの先祖に喧嘩が強いやつか、調子のいい奴がいて、勝手にここからここまでが自分たちの土地って決めて、ぶん取っていっただけじゃないか。どこもそんな風にして、勝手に奪い取っていた。武家なんてみんな泥棒だ。何代も続いた由緒正しい大泥棒だ!」
男のなかに憎しみがこみ上げてくる。
「俺らは武家やそこに群がる金持ちしか狙わない。つまり奪われたものを奪い返しているだけだ。あんたらに比べたら、俺のしていることなんてかわいいもんだ」
「おまえ?いかれているのか?」
「いかれているのは、そっちのほうだろ!」
「…しかし、それは…」
と、そこにカジがやって来た。
「やつら、来ましたよ」
「よし、じゃあ、始めるとするか」
男が鋭い目つきで直虎に小さな針を突きたてた。
「悪いがしばらく大人しくしてくれ」
直之と六左衛門は加勢の者たちと、中村屋の案内に従い、険しい山道を歩いていた。
あたりが薄暗くなり始めた頃、六左衛門が前方を指差し叫んだ。
「あ!あそこ!」
加勢の者たちを小屋の周辺に潜ませ、直之は扉の前に立った。
「井伊の者だ!」
しばらく待つが返事がない。
「殿を返せ!」
やはり返事がないため、直之は思い切って中に押し入った。
と、そこに直虎が倒れていた。
「殿!直虎様!!!」
慌てて駆けつけた六左衛門が直虎を抱き抱えたが、意識はない。
息はしているので、薬で眠らされているようだ。
「しかし、敵はどこへ?これでは銭は渡せ…」
六左衛門の言葉に直之がハッとした。
「騙された!奴らの狙いは金ではなく、馬だ」
まさに今、繋いでいる馬を奪おうとする男たち。
「簡単に引っかかったな」
「井伊のやつらなんて、間抜けなもんだ」
いい気になる手下たちを男が一喝した。
「余計な口叩かずに早くやれ!」
そういった瞬間、どこからともなく視線を感じた男は「まずい!逃げろ!」と合図した。
男たちが背を向けた瞬間、次々と矢が降って来た。
味方にも気づかれることなく、闇に紛れて弓を仕掛けていたのは傑山である。
南渓は、一足先に帰った傑山から報告を受けると、すぐに政次に直虎の無事を告げた。
「もうじき戻ってくるだろう」
「そうですか。では」
いつものように冷静な政次であったが、誰よりも安堵したことであろう。
傑山を遣わして欲しいと頼んできたのは政次である。
「…あいつも浮かばれないな」
思わず南渓がつぶやいた。
新たな挑戦に新たな試み
誘拐騒ぎから一夜明け、無事に館に戻った直虎。
「知らない街で、泥棒を一人で追いかけるなど…」
たけの涙交じりの小言を聞きながら、直虎は髪をすいてもらっていた。
「たけ、もう少し優しく」
「私はいつまで姫様の心配をすればいいのですか!」
「い、痛い!」
「たけはもう、嫌です!」
怒っていたたけが、急に泣き始めた。
そんなたけの背中を優しくさすりながら祐椿尼が直虎を睨みつけた。
悪者扱いされ、いたたまれなく思っていると、そこに高瀬がやってきた。
「お母様、手当を」
「怪我などしてない」
と、言いながらも、小さなアザやたんこぶがいくつもある。
「軽く見ていると後で大変なことになりますよ。お母様は井伊にとって一番大切なお方です。お母様にはその心構えが足りていないと高瀬は思います」
返す言葉もない。
「どれほどの騒ぎだったか!何度も何度も言っておりますが、猪突猛進も、いい加減にしてもらわないと」
三方から責められ、流石の直虎も小さくなっていた。
「えっ?盗賊を追わない?こんな目にあわされたのにですか?」
評定の場で、直之が叫んだ。
「結局のところ、盗まれたのは私のお金だけであったし」
「額の大小の問題では無い!井伊の面子に関わることです!」
「…まぁ、こちらから近づかなければ、わざわざ向こうから襲ってくるとは思えないし」
「ようは、処刑するのが嫌なんでしょう」
痛いところをつかれるが、それらしい理由を並べ立ててみる。
「わからないのだ!盗賊の顔も隠れ家がどこにあったかも。もし奴らを追えば、井伊が手薄になり、無用心だ」
完全に納得したわけではなかったが、直之は黙って引き下がった。
「心配をかけて申し訳なかった。これからはわたしも人一倍気をつけるようにするから」
「本当に頼みますよ!」
「では」と、頭を下げ部屋を出た政次の背中を見送っていると、突然直之が立ち上がった。
「さぁ、六左殿、庭で剣術の稽古をしましょう」
「え?」
「俺一人では太刀打ちできない。もう少ししっかりしてもらわないと困る!」
嫌がる六左衛門を引っ張っていく直之。
こうして、いつもの穏やかな暮らしに戻っていった。
しかし、それ以来、米俵を館に運ぶ弥吉の姿を見るたびに『領主なんて泥棒!大泥棒だ!』と言った男の言葉が頭の中で渦巻くのであった。
数日後、祐椿尼に何かを教えている高瀬を見かけた。
「何をしているのか?」
「残っていた綿を紡いでおこうと思いまして」
「高瀬は働き者だな」
「百姓気質なため、じっとしておくのが苦手なのです」
直虎は思い切って気になっていたことを尋ねてみた。
「高瀬は…武家のことを泥棒だと思ったことはないか?」
すると、高瀬の糸を紡ぐ手が止まった。
思うところがあるということか。
「正直に言って欲しい」
「自分たちの手で作った食べ物が、自分たちの口には入らない。奪われていると思わないものはいないと思います」
すると、祐椿尼が言った。
「武家も同じです。武家が戦をするのは、がんばった者に与えるための土地を手に入れるためです。だから、戦をして奪っていく事は仕方のないことなのです」
…この世は奪い合うことでしか成立しないのか…
と、そこにたけがやってきた。
「姫様」
同時に高瀬と直虎が振り向いた。
「あ、古いほうの姫様。方久様がお話があるようです」
…古い?どこかいらっとしながら直虎は主殿に戻った。
「直虎様、材木をやりませんか?」
方久らしい、また、新たな商売を切り出してきた。
「木を切り、売るのです。戦により焼かれた城があるということは、新たに建てる館もたくさんあるということです。つまり、材木はあちこちに買い手がいるということです。盗まれたという事もつまりは売れるという証でしょう」
さすがは、銭の犬である。
「しかし、人手が足りないのでは…」
ふと、直虎の頭に無謀な考えが浮かんだ。
しかしやってみる価値はある。
「直虎様?どうかしましたか?」
「一か八か、やってみるか」
直虎はひとり、胸を躍らせながらつぶやいた。
運命の歯車が動き出す
「いろいろと手配していただきありがとうございます」
井伊谷と気賀の間にある寺の一室で、直虎は南渓に頭を下げた。
「本当にひとりで大丈夫か?」
「一対一で向き合いたいのです。そうしなければ伝わりません」
「向こうは来るのか?」
「わかりません。来なければそれだけの縁であったということです」
中村屋の与太夫に頭と呼ばれる男を捜させ、手紙を託けたのである。
『明日の朝8時 神宮寺でひとり待つ 直虎』
もうすぐその時間が迫っていた。
どこか想い人を待つかのようにそわそわとする直虎。
その姿を見た南渓は思わず「では邪魔者は退散しよう」とこぼしながら去っていく。
ひとり、男を待つ直虎は、緊張の面持ちで待っていた。
「そうしていると尼さんに見えますね」
男が入ってきた。
「本当にひとりで来るなんて、肝が座ってますね」
おかみが持ってきた手紙には驚いたが、あの尼小僧ならやりかねないし、なかなかあきらめないだろうと思って男は寺にやってきたのだ。
「ところで、話とは?」
男は直虎の正面に座った。
「寺に入ったばかりの頃、私は寺の質素な食事に耐えられず、ひもじくてかぶを盗んだことがある。追いつめられれば人は盗みを働く。百姓であろうが武家であろうが関係ない。つまりひとりの人間として、私とお前は同じように醜いのだ」
「ひとりの人間として…」
「だか、それでいいのか?人として生まれたのに、醜い事をしなければならない。それで幸せか?それでいいのか?」
男に言われたことや、高瀬や祐椿尼の言葉…皆んなの思いや考えを自分なりに解釈してみた。
「世の中に背を向け、泥棒の泥棒などと、歪んだ正義を振りかざし、結局は逃げ隠れしながら生きていく。それでいいのか?」
「なぁんだ。そんな話ですか」
そっぽを向いて帰ろうとした男に、直虎は叫んだ。
「逃げるな!私も逃げずにお前から言われたことを考えた。だからお前も私の言葉を受け止めるべきであろう!」
立ち尽くし、無言のままであった男が、やがて腰を下ろした。
「人が醜いのは生きる力の裏返しであろう。しかし、醜い事をしなければ生きていけないのは、決して幸せなことではない。やらなければならないのは、醜いことをしなくても済むよう
な世界を作ることではないか」
「世界を?」
「奪い合うことでしか生きられない世界を変えたいと言うのならば、奪いあわなくても生きられる世界を作り出せば良いではないか!」
「…世を…つくる…?!」
なんともでっかい話に男は呆然とした。
「そうだ!」
「は?あんた、いかれてる?」
バカバカしくて笑いがこみ上げてきた男に、直虎は言い放った。
「やってみなければ分からないだろう!」
「無理に決まってるだろう」
男も声を荒げた。
だが、そんな事で引く直虎ではない。
「ああ、なるほど。できることしかやらず、腹いせに泥棒とな。なんともしょうもない男だなぁ」
言葉に詰まる男を見て、更にたたみ掛けた。
「井伊は、材木で商売しようと考えている。その木を切る仕事を引き受けてはもらえないだろうか」
「木を切る?」
「お前たちは素早く木を切る腕を持っている。それを使ってみないかと言っているのだ。分け前は私が七分でお前が三分。どうだ?」
「なんでこんなとんでもない話をわざわざ俺に持って来る?」
「お前に言われて、確かに武家は泥棒かもしれないと思ったのだ。しかし、私はそれを認めるわけにはいかない。であれば、泥棒などと言われないような行いをするしかないではないか
。結局のところは自分のためだ」
嘘偽りなく、自分のためと言い切る直虎の、まっすぐな潔さに男は思わず微笑んだ。
「よし、わかった!よろしく頼みますわ、直虎様!」
「おうよ!こちらこそよろしく頼むぞ、頭!」
頭?
「そういえば、お前、名前は何と申す?」
「龍雲丸だ」
「龍雲…雲の龍かぁ」
空に立ち上る見事な龍雲の下、二人の交差した運命がようやく重なり、龍雲丸の率いる一団は井伊にやって来ることとなった。
うまくいったと喜んでいた直虎であったが、事はそう簡単には運ばないことを、やがて痛感させられることとなる。
以上、おんな城主直虎21話のあらすじネタバレでした。
以下は実際に放送を見ての感想です。
おんな城主直虎21話の感想
今回は新たな商いとして気賀に進出し、スリにあったことが切っ掛けで旅の男と再会することになりました。
この男も領主に搾取されていると感じ盗賊団の頭になったようです。
領主を快く思っていない盗賊たちを商いに引き込むことを考えるとは。
事がうまく運びそうになると今度は直之たちを説得しなければならなくなり、材木の商いが上手くいくのか心配ですね。
気賀の町を取り仕切る中村屋
種子島作りがダメになった方久は気賀で新たな商売を考えます。
金儲けに関しては切り替えが早いですね。
また新しい登場人物出てきました。
中村与太夫という町を取り仕切る元締め的存在の男性。
早速会いに行き、綿布の売り込みを始めます。
気賀が商いの町として栄えたのは地の利があったからのようです。
浜名湖は海にも面していて異国へも幅広く売れるというのは、この時代としては大変な事でしょう。
気賀には売るだけでなく、外国から珍しい品も入ってきているのですね。
栄えている町には子供のスリもいるものなのでしょうか。
銭入れを盗まれた直虎は盗人のアジトまで追いかけてしまいました。
井伊に身代金の要求が届く
縄で拘束されて身動きが取れず得体のしれない場所へと監禁されることに。
盗賊団の隠れ家は一つの町みたいになっています。
その頭が直虎と何度も出会っている旅の男。
井伊の領主と名乗っている事を知ると真っ先に直虎のところへ来ました。
この旅の男とは随分縁があるようですね。
俺の女にするかという発言は、直虎の事が気に入っているのでしょうか。
直虎の水筒を大事に持っているくらいですから好意があるのかもしれません。
井伊では直虎が失踪して一大事。
かどわかされたと必死の捜索が始まりました。
井伊には直虎の銭入れと身代金要求の文が。
冷静に銭の受け渡しで現れた人間を捕らえればいいと知恵を貸す政次ですが、直虎の事を一番心配しているのは彼のようです。
直虎の方は自力で脱出しようとしていると短刀が降ってきます。
この刀で縄を切って脱出するだけかと思いきや、まさか子供を人質に脅すとは。
直虎に子供を殺すことなんてできませんから、あっさりと取り押さえられます。
領主が泥棒だと言い放つところを見ると旅の男には領主に酷い事をされた過去でもありそうです。
年貢をとられることに不満があるのでしょうか。
直虎救出のために必死な直之たちですが、まさか盗賊たちの真の目的は馬だったとは。
直虎が無事にみつかって良かったのですがセコイ連中です。
遠くから弓で攻撃して追い払うとは、傑山は僧とは思えないほど逞しいですね。
政次が和尚に相談したおかげで馬も盗まれずにすみました。
今回は政次に助けられた感じです。
直虎の事を一番に思っているのに、和尚の言う通り浮かばれない人です。
猪突猛進に突っ走る直虎に高瀬も祐椿尼も心配しています。
直虎の突き進む姿勢は長所でもあり短所でもあるのですね。
木材の商いに盗賊たちを雇う
直虎は年貢を納める百姓たちを見て、泥棒と言われたことを思い出していました。
百姓出身の高瀬に、武家をどう思っているのか聞いてみると同じような答えが返ってきます。
武家も武家で土地を奪わなければならず、結局どの立場にあっても苦しい事に変わりはないようです。
奪い合いの連鎖なのですね。
それにしても古いほうの姫様とは酷い言い方です。
本当の事なのでしょうが少し可哀想な気がしました。
方久は、今度は材木で商売をしようと考えます。
盗むほど価値があるものならば売り物になるのでしょう。
冒頭に出てきた中村屋に盗賊団の頭の事を聞くと心当たりがある様子。
やはり、あれだけの文が書ける人間となると限られてくるみたいです。
中村屋を通して旅の男に文を送ることが出来ました。
直虎なりに旅の男と分かり合おうとしているのですね。
旅の男と一対一で語り合う機会がもて、奪い合わなくていい世の中を作ると宣言します。
材木で商いをすることを話し、彼らも潤うよう仕事をさせるとは。
材木を切ることに特化した彼らが働き、相応の報酬を与えることで納得させられたようです。
ここでようやく気を許してくれたのか龍雲丸という名前まで知ることが出来ました。
偶然出会った男とここまでの縁になるとは。
しかし、今度は打ち首になるはずだった龍雲丸がいることで直之たちは納得できないようです。
盗賊たちに盗みをやめさせることが出来そうだったのに新たな問題が出てきましたね。