おんな城主直虎 19話のあらすじネタバレと感想

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NHK大河ドラマおんな城主直虎19話のあらすじネタバレと感想です。

あらすじのネタバレは放送開始前に、感想は放送開始後に追記します。

⇒おんな城主直虎18話のネタバレと感想はこちら

⇒ネタバレと感想記事の一覧はこちら

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おんな城主直虎 19話のあらすじネタバレ

無事に綿の収穫を終え、数日経った頃、直虎のもとに甚兵衛がやってきた。

「綿で布を作る?」

「はい。そのほうが高く売れるのではないかと言う話になりましたが、方久さまがいらっしゃいませんでしたので、直接ご相談にうかがわせていただきました」

綿から糸を紡ぎ、それを布に仕立て上げるまでの工程を、三河から来た又吉が知っているらしい。

「村の者たちの仕事が増えることになると思うが、それは大丈夫なのか」

「これで少しでも暮らしが良くなればと、女性陣たちも張り切っております。どうやら自分たちも身に付けられると思っているようで」

「であれば、構わないが」

「では早速取り掛かるようにいたします」

勇み足で去っていく甚兵衛の背中を、直虎は笑顔で見送った。

「綿の方は大変上手くいっていますね」

六左衛門も嬉しそうである。

「本当に。又吉がこの村にやってきてくれたのはまことにありがたい」

「しかし、方久殿はまた駿府にいかれているのですか」

方久は、今川を相手に苦戦しているようであった。

早く種子島を作るように催促され、商売を広げようと思っても、組合の商人たちが占領しているため、駿府では自由に商売することもできない。

「裏切って、影で但馬と手を組んだりはしていませんでしょうか」

時を同じくして政次も駿府へ行っていたため、直之がそんなことを言った。

「自分の味方につき、乗っ取りの手伝いをすれば、村を授けるなどと言われてませんかね」

「うーん…たしかに油断はできないが…つい先日、暴れたばかりだから、しばらくはおとなしくしてるのではないか?あまりやりすぎるとお前に斬られるかもと思っているだろうし」

敵も味方も欺きながら、互いをうまく使い、大切なものを守る。

井戸端での政次との話を実行する。

実を言うと、政次は、今川と武田の様子を伺ってくると言い残して駿府へ行ったのだ。

事件勃発

そこに突然、「近藤様が急なご用事で、お見えになっております」と、弥吉がやってきた。

三目付のうちのひとり、近藤康用が急ぎの用とは…直虎たちは思わず顔を見合わせた。

「急に訪れたことをお許しくださいませ」

「どうか、気になさらずに」

以前、百姓を貸してほしいと押しかけてしまったっていたため、なんとなく気が引けていた。

「実は、我が領土内に井伊の者が勝手に入り、山の木を盗んだと報告が来ております。そのため、盗人を引き渡していただきたいのですが」

「盗人…」

あまりの驚きに言葉を失う直虎に変わり、直之が言った。

「井伊の者とは限らないのではないですか?」

「盗みがあった山は、井伊とのちょうど境目のところで。ここ最近、井伊には身元もわからないような輩が、どんどん入ってきているようですし・・・まぁ、その輩たちが犯人で間違いないかと」

完全に決めてかかっている様子に悪意がある。

「他所から来た者達は、怪しい動きをしないように、村長にきちんと面倒を見させている」

「しかし、家中にすら人が足りていない様子。とても管理統制できているようには見えません」

「皆、井伊のためによく働いてくれる。盗みをするような輩はおりません」

「そのように、信じたいのはわかりますが、所詮よそ者の集まりでございましょう」

講釈をたれる近藤のしゃくれ顔に嫌気がさしてきた。

「だからこそ、しっかりとやっていこうとしているのだ」

「二度あることは三度あるといいますし…」

「実は、犯人は近藤の者ではないのか!」

我慢の限界を超えた直虎の口からとんでもない言葉が飛び出した。

「境界にある木を切れば、当然井伊の者がやったと思う。それをわかっていて、近藤の者が仕掛けたのではないか!」

「言いがかりも甚だしい」

「先に言いがかりをつけたのはそちらだ」

今にも飛びかかりそうな勢いの二人の間に入ったのは六左衛門であった。

「では、一緒に犯人捜しをしてはいかがでしょう」

すごい形相で二人に睨まれた六左衛門は、一瞬ひるんだが続けた。

「こ、ここでこれ以上言い争った所で、どうにもならないかと…」

「たしかに、捕まえてしまえば、一目瞭然!」

直之も援護射撃を行なった。

「近藤殿はそれでよろしいですか?」

二人のおかげで、直虎は落ち着きを取り戻しつつあった。

「私は構いませんよ。井伊にとってはいい案だとはおもえませんが…」

またも近藤の余計な一言に、直虎の収まりかけた怒りが爆発寸前であった。

翌日、問題の現場には直虎たちの姿があった。

「こ…これはひどい…」

大量の切り株を目前に、言葉を失った。

直之も顔をしかめている。

立ち会っていた近藤は、それ見たことかとふんぞり返りながら言った。

「ここを境にして、向こう側は井伊の領土、こちら側は近藤の領土ですが、こちら側だけきれいにやられているのがお分かりでしょう」

言い返しようもない事実であった。

悔しさに口をひん曲げていると「直虎様!」と慌てた様子で、山に詳しい井伊谷の村人が2人駆け寄ってきた。

「どうした?」

「もう少し向こうの方を見てきたのですが、同じような場所がありました!」

「ほれ見ろ!井伊の方も同じような目にあっているではないか」

「まさか…井伊の者の仕業ではないと見せるために、昨夜慌てて細工したのでは?」

バツの悪かった近藤はとんでもないことを言い出した。

「昨日の今日で、そんなことができるわけないであろう!」

「いや、わかりません!ここには身元のしれぬような者がたくさん入ってきているようですから」

だんだんと熱が上がっていく二人の間に、またも六左衛門が割って入った。

「犯人を捕まえましょう。そしたらそれで済むではないですか」

脂汗をにじませながら必死な様子の六左衛門のおかげで、二人は渋々はなれたかと思うと、全く同じタイミングで「捜せ!」と命じた。

事件解決?!直虎の判断は?

龍潭寺では、虎松たちが熱心に五目並べをしていた。

直虎が来たことに気付かない様子だったので、直虎は昊天の真似をしながら、どれどれ…と覗き込んだ。

「ほほう」

直虎は感心した。

虎松が粘りを見せ、健闘していたのだ。

「はい。勝てはしませんが、負けもしません。面白い置き方をされます」

「絶対に戦わない」といった政次を思い出した。

千差万別、色々な戦い方があるもんだ。

「和尚様に御用ですか?」と昊天が訪ねてきた。「いいえ、今日は傑山さんにお供のお願いに伺いました」

山で残って捜査に当たっている直之から、何の連絡もないので心配になり、直虎は傑山を連れて様子を見に行こうと考えたのだ。

南渓に常慶のことも聞いておきたかったが、あの山伏はなかなか所在がつかめないため、こちらから呼び寄せることは難しいらしく、向こうが来るのを待つしかないらしい。

3日ぶりに会った直之は、ヒゲも伸び、薄汚れていた。

「もしかしたら、見張られていることに気づき、場所を変えたのかもしれません」

「では、山狩りはこれで終わりか?」

「それが…近藤殿は捕まえるまで絶対に止めないと。かなりしつこい方のようです」

と、その時、少し離れたところから、大勢の者が争っているような悲鳴や罵声が聞こえてきた。

「行くぞ!みなのもの!」

傑山に直虎が飛び出してこないように頼みながら、直之が真っ先に駆け出した。

誰よりも主の性格をわかっている直之である。

駆けつけると、そこでは近藤の家人たちが、十人ほどの窃盗犯とやりやっていた。

手段を選ばず抵抗してくる窃盗犯に苦戦していた近藤の家人たちが、井伊に助けを求めて来た。

数人の窃盗犯を追い詰めていた、近藤の家人たちを助けようとした直之の目の前で、突然、家人の一人が倒れた。

すると、他の者たちもバタバタと倒れ、その隙に窃盗犯たちは散っていった。

直之が倒れているものに駆け寄ると、首に吹き矢刺さっていた。

飛んできた方向に目をやり、凝視していると、うっすらと動く影があった。

直之の合図で傑山が弓を引いた瞬間、その人影は転がり落ちてきた。

そこへ周りにいたものが一斉に飛びかかり、遅れて直虎もやってきた。

捕まえてみると、怪我はしていないようであった。

捕らえられた男の顔を見た直虎は唖然とした。

「お前は…」

「おー!尼小僧さま!」

「お知り合いなのですか?」

「えっ。ま、まぁ…」

いつの間にか隣に立っていた近藤が、すかさず口を挟んだ。

「では、そいつは井伊の者ということですか?」

「い、いや…」

「しかし、そいつは直虎様のことをよく知っているようですが」

説明のしようがなく答えに困っている直虎に代わって、男が答えた。

「私はただの旅人で、とある折にお水を恵んで頂いただけです」

「なにが、旅人だ!仲間がたくさんいたではないか!」

近藤はイライラしているが、当の男は「仲間?」と、なにやらわからない様子で目をパチクリしている。

「いただろう!仲間が!」

「取り囲まれて痛めつけられていた者を見かけ、可哀想になったから、つい助けようと…」

「ふざけるな!」

刀を抜いた近藤に、男はのけぞった。

「待ってください!」

直虎が割って入った。

「この男を捕まえたのはこちらの人間です。だから、この男の処分もこちらに任せてはもらえないでしょうか」

近藤はしばらく直虎を睨みつけていたが、全く引こうとしない様子に観念したのか、刀を収めた。

「…くれぐれも、厳しい処分をお願いします」

「承知いたしております」

当主としての判断を求められる直虎

連れ帰った男を館の牢屋に放り込み、傑山を見張りにつけた。

直之が、あの男との関係を聞いてきた。

「聞いていただろう。水を与えただけだ」

直虎が何か隠していると勘ぐっている直之は納得しなかった。

「それにしても、随分と親しいようでしたが?」

直之に見透かされ、諦めた直虎は話し始めた。

「じつは…二回ほど助言してもらったことがあるのだ。人集めの時と、虎松が逃げ出した時。虎松が前向きになれたのはあの男のおかげといってもいいほどだ」

「はぁ。それはなんとありがたい」

なんとも素直な六左衛門がつぶやいた。

「そうなんだ。だからあまり無下にはできない」

なぜ、戦国の世に、このような馬鹿正直なお人好しが二人も井伊にいるのだろうか…と、直之は大きなため息をついた。

「まぁ、とりあえずは、井伊の者ではなかったということで、よかった。よかった」

能天気な主に、直之がびしっと言った。

「こちらであの男を処刑しなければならなくなりましたね」

「しょ、処刑?!」

「当然でしょう」

「いや、なにも、そこまでしなくても」

「井伊の領主は罪人の処分もできないような小心者だと笑われますよ」

「しかし、木を盗んだだけではないか」

「そうです。ご先祖様が命をかけて守ってくださった井伊の領土の大切な山の木が、何本も盗まれたのです!」

直之の剣幕に直虎はひるみ、六左衛門に助けを求めるように、目配せした。

「あ…あの…とりあえず、但馬殿の帰りを待ってはいかがでしょう」

「そ、そうだな!」

「なぜ、そのような必要が?」

「但馬にお伺いをたてておかないと、あとでどう言われるか…」

直虎にうまく逃げられ、直之は捨て台詞のように言った。

「どうせ、但馬も同じことを言うと思いますがね」

長い一日に疲れ果てた直虎は、布団に倒れこんだ。

「まさか、盗賊だったとは…」

一方、牢屋で直虎の水筒を見つめる男。

「御領主様だったとは…」

真逆の立場にある二人の運命が交差した。

翌日、直之が早速駿府から戻った政次に窃盗犯の件を説明した。

「捕まえたものの、犯人はどちらの者でもなかったと…」

政次の答えを直虎たちが固唾を飲んで見守っている。

無表情で考える政次に、しびれを切らした直虎が口を開いた。

「こちらが捕まえたから、こちらで預かっているのだか、みなは、どう処分すればいいと考えるか?」

「仲間と計画的に犯行を行なっており、罪は大きいと思います。処刑が相応かと」

直之が勝ち誇ったように、やはり!という顔になる。

「処刑か?」

「はい。それが妥当かと」

「今、処刑と言ったな」

念を押した直虎を不思議に思いながら、政次は返事をした。

「…はい」

「よしわかった。それならば、処刑はしない!この話はもう終わりだ!」

言い放った直虎は、さっさと出て行った。

すると、直虎の狙い通り、直之が追いかけてきた。

「但馬がやれと言うことをやったら、奴の罠にかかると思わないか?」

「そ、それはそうかもしれませんが…」

「だから処刑はできないということだ」

「処刑せずにどう処罰するのですか?」

「百叩きにでもして、放てばいいだろう。そうすれば、二度と井伊で悪さすることはないだろう」

主殿に取り残された政次が、おどおどしている六左衛門に尋ねた。

「殿は何故あんなおかしなことを?」

慌てて目をそらす六左衛門。

「井伊で窃盗を行なったということは、駿府でも行なっているかもしれない。となれば、井伊は太守様の敵を見逃したことになります」

ごまかし切れる自信のない六左衛門は、観念したように答えた。

「どうも…お知り合いのようで…」

「知り合い?盗賊と?」

「はい…恩があるようで」

政次も呆れ果てた様子であった。

直虎にしつこく食らいついている直之が言う。

「近藤殿に、どう言うのですか?」

「処刑したと言えばいい!下がれ!」

「確認したいと言われたらどうするのですか」

直之もなかなか引き下がらない。

「焼いてしまったとでも言えばいいだろ!下がれ!」

「逃した罪人と近藤殿がばったり顔を合わせでもしたらどうするのですか」

「女子の部屋だぞ!下がれ!」

訳のわからないことを言いながら怒鳴る直虎に、直之も負けじと怒鳴り返した。

「次はなにを言われるかわかりませんよ!」

互いに一歩も引かず睨み合っていると、「和尚様がお呼びです」と、小坊主の連絡が入った。

助かった!と言わんばかりの直虎は、不満げな直之を残し、龍潭寺へと急いだ。

水面下でうごめきあう各々の思い

「和尚様、お話とは?」

襖の先には南渓と向かい合う政次がいた。

瞬間、南渓が、しまった!という顔をし、「では」と、そそくさと出て行った。

南渓の後について行こうとした直虎を、政次が遮った。

「お話ししたいことが沢山あります」

「そうか。今川の様子はどうだったか?」

わざとらしく話題をそらしたが、政次は聞く耳を持たず、本題を切り出した。

「もし、あの男を逃してしまえば、井伊は罪人を罰せないと噂がたち、多くの罪人が集まり、村の治安は悪化するでしょう。犠牲になるのは村人です。民を守る領主であれば、罪人には
罰を与えなければならないのです」

「…でも…あの男には、恩があるのだ」

「知らないものなら処刑するが、知ってるものは見逃すと言うのですか?それこそが大きな間違えです」

直球で痛いところをついてくる政次。

「べ、別に見逃す訳じゃないが…殺すことはないであろう…そうだ!働かせてはどうか?人出も足りていないし、ただ働きさせるのが井伊にとっても得策だ!違うか?」

「…わかりました。では、後日改めて細かい内容を考えていきましょう」

「本当か?本当に分かってくれたのか?」

こんなにたやすく政次が折れてくれるなんて、驚きだ。

「本当は拷問をかすことが、いい方法とは思いませんが、やるという殿をとめることはできないので…」

「さすが鶴!ありがとう」

「いえ…」

「で、今川の様子はどうであったか?」

「良かったことが一つ。大方様が回復されました」

「持ち直されたか!」

「早速、武田信玄公に働きかけ、義信殿の幽閉を解くよう尽力されています」

「うまくいきそうか?」

「分かりませんが、もし上手くいかなければ、今川は、武田に備えるために、松平と手を結ぶかもしれません」

「そうなれば…」

ごくりと唾を飲み込む直虎。

「わたしは武田と戦うことになるのか?」

「もしそうなれば、おそらく…」

常慶から連絡があったら知らせて欲しいと言い残して、政次は部屋を後にした。

「今川と松平が…」

ひとりブツブツ言いながら、子供達が遊んでいた碁盤を眺めていると、南渓がやってきた。

「なにをしているのだ?」

「これが今川で、こちらが松平」

碁盤で碁石を動かしながら、説明した。

「こうなると今川は、武田に立ち向かうために松平と手を組むことに」

「うむ。あり得る話だな」

「武田はこうなることを考えなかったのでしょうか。そもそも上杉との戦いのために今川と手を組んでいるわけで、まだその戦は続いています。ここで、今川を切れば武田は南北に敵を
作ることになります」

「武田は北条とも手を組んでいるから…」

「…しかし、北条は今川とも組んでいます。だから…うーん…どうなるのだ?あああ!皆んな仲良くしてくれればいいのに!」

直虎は混乱していた。

牢屋で麦飯を食べていた男は、傑山に話しかけていた。

「どうして、あの尼小僧様は、御領主なんかをされているのですか?」

ぎっと睨んだ傑山にめげることなく、にやけ顔でさらに続ける。

「そのくらい教えてくれてもいいじゃないですか〜」

なんともつかみどころのない、憎めない奴である。

「度重なる戦により、井伊には直系の男子がいなくなってしまってな」

「あー。旦那を亡くして出家した後家さんが、息子の後ろ盾に」

「いや、直虎様は先先代の御領主のひとり娘で、出家したのは十の時だ」

「十で?!」

思わず米粒を吹き出してしまう男。

「結婚を誓った相手の父親が謀反を起こしてな。だが、直虎様は他の誰とも結婚はしないと言って出家されたんだ。今はその許婚の息子に、井伊を引き継げるように頑張っておられるのだ」

「はぁ?それは、自分の息子じゃないんでしょ?」

「そうだ。直虎様は井伊のお家のためにしか生きていないのかもしれない…」

「そこまでして守らなければいけないのですかねえ。よく分からないなぁ」

「…のう。…幸せなのかのう」

いつも人のために泣いたり怒ったり笑ったり…己の宿命を恨むことなく立ち向かう、直虎の健気な姿に傑山は胸を痛めた。

「お坊様も分からないのか?」

「ただ、直虎様は竜宮小僧だから、そのようにしか生きられないのだろう」

「竜宮小僧?」

不思議そうな顔をする男に、傑山が眉をひそめた。

「お前、やけに落ち着いてるなぁ。明日処刑されるかもしれない身なのに」

「……このようなことをしていれば、常に覚悟はできてますから」

一瞬間が空いたのが少し気にはなったが、傑山は交代に来た六左衛門と代わった。

なんたる失態

その夜、直之のいる中野の屋敷に、政次が訪れていた。

先ほどまで剣術の稽古を行なっていたという直之は、額に汗しながら言った。

「なんの用事ですか?」

「盗賊をとらえた時、近藤殿はどんな様子でしたか?」

「それはもう、その場で斬りつけんばかりの勢いでしたが…それが、なにか?」

「やはり、盗賊は、近藤殿に引き渡した方がいいかと」

「今更ですか?」

「仲間がいる様子なので、井伊で処罰すれば仲間から恨まれるかもしれない。面倒なことになりそうだし」

「…しかし、なんとも情けない話ですなぁ」

「このままでは、近藤殿が怒鳴り込んでくるのは目に見えている。事が大きくなる前になんとかしなければ」

「では、近藤殿には私から連絡しておきましょう」と、ため息まじりに直之に、政次が言った。

寺では、直虎が子供たちを前に問答していた。

「木を盗んだものに与える罰?」

「わたしは、その者に罰として井伊で働いてもらおうと考えている。皆んなならどんな罰を与えるか?」

側にいた祐椿尼とたけも考えていたが、なかなかいい考えが浮かばない。

そこに、亥之助が「自分の代わりに、習字をやらせます!」と、張り切って言った。

「それば自分のためではないか。いや、自分のためにすらならないぞ。虎松、何かないか?」

「木を切ったのならば、木を植えさせたらどうでしょうか」

なかなか理にかなった考えに、直虎は感心した様子で「ぜひ、それもやらせよう!」と、声高に言った。

「ほかにはないか?直久はどうだ?」

「先日とらえた窃盗犯への罰を考えているという事ですよね?」

恐る恐る口を開いた直久は、直之の弟とは思えないくらいひ弱な感じで、神経質そうであった。

なにやら、昨晩、政次と兄が話しているのを耳にしたというのである。

「わたしに内緒で引き渡そうとするなんて、どういう事だ!」

慌てて館に戻った直虎は、直之を捕まえるときつく絞り上げた。

「殿がどうしても処罰できないと言うから仕方がないでしょう!」

「但馬の口車に乗りおって。お前は誰に使えているのだ!」

「今回の事は但馬が正しいかと。武家たるもの、罪人はきちんと裁かなければなりません」

「うるさい。お前は棒でも振り回しておれ」

直之を突き飛ばし、次は小野の屋敷に向かった。

「但馬!出てこい!政次!」

その時、庭先で使いに出ようとする家人を見つけ、襟元をつかみながら問い詰めた。

「どこへ行くのか?」

懐に見え隠れする書状を見つけ、近藤に宛てたものだと察した。

それを取り上げようと、揉み合っていると、いきなり後ろから羽交い締めにされた。

「構わないから、早く行け!」

直虎を気にして動けずにいる家人に、政次がまたも大声で命じた。

「問題ないから早く行け!」

ようやく家人は、飛び出して行った。

「戦わないのが最高の方法!」

政次の手を振りほどきながら直虎が叫んだ。

「そう、わたしに教えてくれたではないか。殺しあう前に敵に降参させる。そうすれば、人も金も失わずにすむ。つまり、命のやり取りで物事を収めるのはいいやり方ではないという事
だ!どうか、違うか?」

頭に血の登った直虎に対し、政次は相変わらず冷静であった。

「偉そうに説教していたお前が、どうしてたかが盗賊一人の命を奪おうとするのだ!」

「…いずれにせよ、後から考えた理屈でしょう。どんな言い訳をしようとも、殿はただ知り合いの血を見るのが嫌なだけでしょう」

「ああ!嫌だ!わたしは女だから。女は血など見飽きている!」

とんでもない方向からの切り返しに、さすがの政次も、一瞬うろたえた。

が、直虎の口はいっこうに止まらない。

「生きていれば怪我もするし病気にもなる。生きているだけで血が流れることもある。しかし、他に手立てがあるにもかかわらず、わざわざ血を流すなど…それを権力だ!強さだ!と言
うのならば、なんと愚かであろうか!」

分かってくれない政次に歯がゆさが増す。

「お前が尊敬する孫の書物には、敵の重臣と仲良くし、その国の王や民に反逆精神を無くさせ、戦わずにその国を手に入れたと書かれていた。わたしの側近たちは、ぜひそのようにあっ
て欲しいと願っている!」

「言いたいことはそれだけですか」

「ああ、そうじゃ!」

「では、こちらも言わせていただこう。もし、あの男が虎松をさらったりしたらどうしますか?」

先ほどの勢いは何処へやら…急に黙り込む直虎。

「瀬戸村に押入られたら?殿が今守るべきものはなんですか?」

答えられずに苦しんでいると、そこに直之が飛び込んできた。

「直虎様!あの男が!!」

吹き矢で六左衛門を眠らせ、その隙にトイレの穴から館の裏手につながる道を使い逃げたというのである。

「わずか数日の間にか!」

政次も驚きを隠せない。

引きつった顔で呆然と立ちすくむ直虎。

「直虎様…」

「阿保か…わたしは阿保か!」

「自業自得です」

そのうちはらわたが煮えくり返ってきた直虎は、「もう知らん!今度あったらすぐに処刑だ!」

裏切りは簡単に女性を豹変させる。

浜名湖で体を洗い、すっきりした男は仲間と話していた。

「遅かったから、どうしたのかと心配しましたよ」

「尼小僧にもう一回会いたくてな」

きっと今頃はカンカンに怒っているだろうが、世にも珍しいお宝を見つけたと、男は嬉しそうであった。

逃げる時に邪魔になるにもかかわらず、その手には、直虎の水筒をしっかりと握りしめていた。

井伊にとって吉と出るか凶と出るか・・・

今川の館では、武田からの書状を受け取った氏真が怒りに手を震わせていた。

義信殿を跡取りから外し、妹とは婚姻解消させる…

武田は全く聞く耳を持たないようだ。

「なぜここまで卑劣なことができるのだ。信玄公が父上を追放した時、丸くおさまるよう手を貸したのはこの今川ではないか!」

氏真の母である定恵院と信玄は実の姉弟なので、氏真からすれば、叔父の信玄が祖父の信虎を追い出したことになる。

「そもそも自分の親でさえ追放するような卑怯な男です。理由など聞いても仕方ないでしょう」

生死をさまよいながらも戻られた寿桂尼は、全く動じなかった。

「西にいるもう一人の恩知らずと、手を組んではどうでしょう」

「松平と?」

一方、直虎にも大事件が起きようとしていた。

顔を引きつらせ、祐椿尼が直虎の元に駆け寄った。

「落ち着いて聞きなさい。今、寺に直親の娘と名乗る者が来ているようです」

「なっ!」

「ただのでまかせかもしれませんし、私が先に会ってみますね」

「い、いや、わたしも行きます」

「いえ、まずは、わたしが」

動揺を隠せないでいる娘を気遣う祐椿尼であったが、直虎も引きさがらない。

「もし本当に直親の娘であったならば、井伊にとって一大事です。このわたしがいかずしてどうしますか!」

意気込みとは裏腹に、全く動揺が隠しきれていなかった。

美しく色づいた木々の葉が、からっ風で散りゆく季節がすぐそこまで来ていた。


以上、おんな城主直虎19話のあらすじネタバレでした。

以下は放送を見ての感想です。

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おんな城主直虎19話の感想

とんでもない形で旅の男と再会することになりました。

命だけは助けようと必死になる直虎ですが、その心配はなかったようで一安心です。

武田と今川の同盟関係も完全に崩れてしまい、井伊にとって大きな受難が降りかかろうとしています。

近藤と井伊の領内から木が盗まれる

前回は政次の真意も知ることとなりました。

井伊を誰よりも守ろうとしていたのは政次だったようですね。

今度は今川からの目付・近藤康用がやって来ました。

何の用件かと思えば、井伊の者に領内に入られ木を盗まれたとは。

井伊にそんなことする人がいるとは思えませんね。

盗人を捕らえるため現場へ。

確かに切られた木の後を見ると大胆な犯行ですね。

井伊の領内の木も盗まれており、ますます犯人が分からなくなりました。

新たな揉め事に頭を悩ませる直虎です。

政次は今川と武田の様子を伺いに駿府へ。

その場には方久も居て、種子島の完成を急かされていました。

状況が良くないだけに氏真の機嫌も相当悪いようです。

政次は病の床に伏せっていたはずの寿桂尼を見て驚いたようでした。

政次さえもまだ聞かされていなかった事なのですね。

寺に再び通うようになった虎松は、勝ちはせぬが負けはせぬ面白い方法で五目並べをしているようです。

虎松も自分で戦略を考えるとは才能有りなのでしょうか。

山狩りの様子を見に行くと、犯人を捕まえるために張り込みをする直之の姿が。

犯人は影も形も見えず、近藤も捕まえるのに必死で諦めないようです。

派手に木を盗まれているのですから当然といえば当然ですが。

ちょうど盗人が姿を見せ、捕まえようとすると遠くから吹き矢で攻撃されてしまいます。

どこから撃ってきたかすぐ気づくなんて流石ゆきの字。

捕まえた相手は直虎と何回か出会っている旅の男でした。

盗人として捕まった旅の男

直之が捕まえたということで男の処遇を井伊に任せてもらうことに。

一体この男は何者なのでしょうか。

なんだかんだで、この男には知恵を貸してもらい恩がありましたね。

虎松が再び寺に通うようになったのも、この男のおかげでした。

しかし、直之の言う通り山の木を大量に盗んでいった犯人となればただで済ますわけにはいきません。

良い人のように思えた人物が賊だったなんてショックでしょう。

旅人も直虎へ何か強い思いを抱いているようです。

政次の意見を聞きますが、やはり打ち首と言われてしまいました。

政次は井伊では敵なので、彼がすべきだと言うことは罠だとして打ち首を回避するとは。

政次の真意を知った後だと悪者にされるのもなんだか不憫ですね。

打ち首にせず百叩きで済ませることになりました。

そこで政次にチクチク責められる奥山。

やはりいつものように話してしまうのですね。

直虎が和尚に呼び出されて来てみると、そこに待っていたのは政次でした。

民を守るために悪人への処罰はちゃんとすべきという意見はもっともです。

治安維持も当主の大事な務めですからね。

しかし、あの旅人は打ち首にするほど悪い人間のようには思えません。

打ち首ではなく労役を課せばいいという説得を、意外にもすんなり聞き入れてくれたようです。

幼名で「鶴!恩に着る」と感謝された時の照れた表情が可愛かったですね。

武田と今川の同盟が破綻する

寿桂尼が回復したおかげで同盟関係が崩れることを阻止できそうという雰囲気ですが。

同盟が破綻したら武田と戦わなければならない井伊が危険な立場になります。

上杉と交戦中の武田ですが、北條とも手を結んでいるので今川を切り捨ててもいいということでしょうか。

なんだか複雑な構図ですね。

旅人は傑山に直虎の事を聞いて、直虎が当主になった経緯を知ることになりました。

自分の息子ではない跡取りを育てて井伊のために尽くす直虎の生き方に疑問を持ったようです。

傍から見ると理解し難い生き方なのでしょうね。

労役は課すことで話がついたように思いましたが、政次は突然旅人を近藤に引き渡すと直之へ告げました。

旅人の危機です。

直之の弟に教えられ、すぐに気づけたのは運が良かったですね。

政次を説得しようと必死で話をしている最中、旅人は上手いこと逃げていたようです。

数日で脱出する程の穴を掘っていたとは。

命は助かりましたが、直虎としては裏切られた気持ちになったようです。

同盟を強固にしていた氏真の妹の離縁で同盟は完全に破綻。

当然の如く松平と手を組もうとし、井伊にとってはまずい状態となっていきます。

そして突然現れた直親の娘には驚きでした。

そんなことを聞かされては直虎の開いた口が塞がらなくなるのも当然でしょう。

武田の事だけでも一大事なのに、次から次へと悩みが増える直虎ですね。

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