おんな城主直虎 17話のあらすじネタバレと感想
NHK大河ドラマおんな城主直虎17話のあらすじネタバレと感想です。
あらすじのネタバレは放送開始前に、感想は放送開始後に追記します。
目次
おんな城主直虎 17話のあらすじネタバレ
春も終わりを告げ、夏の日差しが厳しくなってきたある日、直之と方久は大きな木箱を手に、直虎の元を訪れた。
直之が、まずはこれをご覧くださいと言って箱を開けると、中には筒状のものが入っていた。
「これはなんじゃ?」
「種子島です」
天文十二年に種子島に流れ着いた、ポルトガルの商人により伝えられた鉄砲であった。
「種子島とは?一体何をするものなのか?」
未だかつて見たことも聞いたこともない不思議なものを前にして、直虎は目を丸くした。
使うところを見てもらうのが一番早いと言うことになり、直虎たち一行は龍潭寺にやってきた。
龍潭寺では、境内に集まった武家の子供たちを、昊天と傑山が出迎えているところだった。
そこには、なつの息子の亥之助や、心之の弟の直久、桔梗に付き添われる虎松の姿もあった。
「よくぞお越しくださいました虎松様。手習いを指導いたします、昊天と傑山でございます」と、丁寧に挨拶するものの、いかつい傑山の笑顔を見た内気な虎松は、桔梗の背中に逃げ込んでしまった。
そこに南渓がやってきて、桔梗の背後を覗き込みながら、「人見知りかなぁ?」と呟いた。
「知らない人がこんなにたくさんいては…」と、桔梗は虎松をかばっていたが、当の虎松はまるで子うさぎのように震えていた。
「虎松様、みんなあなたの味方でございます。怖くなんてありませんよ」と、優しくなだめる昊天に続き、亥之助たちも笑顔で声をかけた。
それでも不安そうな虎松を、亥之助がやや強引に連れて行くのを見て、直虎は安堵した。
寺の裏手では直之が、種子島の使い方を説明していた。
弾や玉薬を手際よく詰め込み、的に狙いを定めて引き金を引いた瞬間、大きな爆発音が響き渡った。
直虎は飛び上がって驚いた。
一瞬煙に巻かれた後、視界が開けると、遠くに立ててあった的は撃ち抜かれ、粉々に散っていた。
「こ、これはなんだ?」と慌てふためく直虎。
「このように、種子島は遠くにいる敵を、近づかずに仕留めることができます」
呆然とする直虎を横目に、直之は声高に言った。
「残念ながら今の井伊には、戦や武術に長けたものが少なくなっております。しかし、これがあればたとえ百姓であっても簡単に使うことができます。武力に乏しい井伊にはもってこいの武器ではないでしょうか」
立ちはだかる大きな壁
直之の言うことはもっともであったが、館に戻り詳細を聞いた直虎は、声を荒げた。
「ダメだダメだ!そのような物!」
種子島の法外な値段に驚いたのである。
まだまだ安定していない井伊の領土では、新しい移住者の世話やなんやで、借金は増えていくいく一方だったのだ。
「しかし!今のままでは、もし戦になれば一瞬でやられてしまいます。虎松様の命も危ぶまれます」
「…し、しかし…」
「自国の民や百姓を守れずして、領主と言えますでしょうか」
「しかし、一つ十貫もするとなると…」
考え込み、尻すぼみになった直虎とは対照的に、方久がはっきりと言った。
「どうしても必要であれば、私の方でお金は工面しますが…種子島を購入したとしても、火薬なども必要になり、これもまた高額のため、井伊には少し身の丈に合わないかと思います」
武士にとって屈辱的な物言いに直之が怒鳴った。
「戦への備えは、重要な武士の役目である! お金の話ばかりするな!」
「何事も先立つものはお金ですよ」と、方久は何食わぬ顔をしている。
と、その時、静かに考え込んでいた直虎が口を開いた。
「これを井平で作る事はできないか?」
「???」
「優れた刀を作ることのできる鍛治の村である井平で、もしこれを作ることができれば、買うよりも安くできるだろう。それどころかよそに売れば稼ぐこともできるのではないか?」
直之「殿!それは名案です。それでいきましょう!」
身を乗り出した直之とは対照的に、方久が慌てている。
「お待ちください。作るなどとそう簡単に言われましても…それこそ、相当な手間がかかりましょう」
「しかし、作れるというものもいるだろう?」
「それは…まあ…」
「ならばやってみなければ、わからないではないか!」
直虎の勢いで、井平行きが決まった。
今川の館では報告を終えた政次に、関口が釘を刺していた。
「百姓を集めるのは構わないが、他国のものが紛れていないか、きちんと目を光らせておくように」
頭を下げ、返事をした政次は、ちらりと氏真に目をやった。
「恐れながら、ひとつお伺いしたいことがございます」
「ばば様のことであるか」
氏真が怪訝な顔をした。
「もちろん回復されることを願っていますが、我が主の後見を認められたのは大方様ですので、その辺が少々気になっておりまして」
「その事は覚えておる。あれは、ばば様が勝手にやったことだし」
面倒な顔をする氏真に気づかないふりをしながら、政次は「大変ありがたく存じます」と頭を下げた。
壁を乗り越えるために
数日後、井伊谷の北方にある小さな村には、直虎と方久、直之の姿があった。
直虎は、あたりを見回しながら興味津々である。
村には、鎚を打つ音が響き渡っている。
三人は鍛冶場を訪れ、五平という刀工に種子島を渡した。
五平は手渡された種子島を見回しながら「これと同じものですか…」と呟いた。
すると、すかさず方久が「このようなもの、そう簡単にはできないよなぁ」と、さりげなく誘導しようとしたが、五平はあれこれと検討を始めた。
「胡桃か樫…鉄は入手できるもので間に合うとして、筒の部分は薄く伸ばしたものを巻いて張り合わせ…」
直之が思わず「できそうではないか!」と叫んだ。
「しかし、ここまでしか見当がつきません。ここからの細かな兼ね合いが肝心です。そこがうまくできるかどうか」
気の乗らない方久が、また口を挟んだ。
「誰もがその難しさにぶつかり諦めるようです。あまり無理をお願いしても…」
「ともかく、やってみなければわかりませんな」
と、直虎の口癖を口にした五平。
「これを見本にいただくことはできますか?」
「いや、それは…」
またも割って入ろうとした方久を制止すると、直虎ははやる気持ちを抑えながら言った。
「良いであろう。それで、いつ頃できるか?」
さすがの五平にも、見当がつかないと言う。
少しがっかりした様子で鍛冶屋を出ると、ふと直之がつぶやいた。
「作り方を知っている者から、その見本図などをもらうことができないだろうか」
するとすかさず、方久が水を差した。
「もしあったとしても、どんなにお金を積んだとしても出さないと思いますよ」
「まったく…けちくさい」
「なんと!結局全てツケは私持ち。あの見本も結局は私が買い取って…」
直虎のおかげで、方久の貯金はみるみる無くなっていたのだ。
「うまくいけば、すぐに取り戻せる。銭の犬ともあろうものが、そうわめき散らすな」
まだ何か言いたげな方久を制すように、直之が割って入った。
「このこと、六左殿には?」
「六左は、すぐに口終わってしまうから、できるまでは知らせないほうが良いのではないか」
直虎は慎重に答えた。
その晩、駿府から戻った政次の部屋に、何やら小さな鉛の魂を手にした甥の亥之助が訪ねてきた。
「不思議なものを見つけたのですが、おじさまならお分かりになるかと思って」
しばらく凝視していた政次であったが、思い当たる節があり、ハッとなった。
「わかりますか?」
「いや全くわからないなぁ」
「おじさまにでもわからないものがあるのですね」
亥之助は、疑いもせずうれしそうにしている。
「当たり前だ。調べておこう」
亥之助が退室した後、政次は鉛の玉ー鉄砲の弾を見つめながら「種子島か…なぜ?」とつぶやき、直虎だまた何か企んでいることに気付いた。
内気な虎松
翌日、直虎は南渓に会うため、龍澤寺を訪れた。
留守であったため、帰ろうとした直虎の目に、囲碁を囲む子供たちの姿が飛び込んだ。
虎松と亥之助が五目並べで対戦しているようであった。
「そこですか?」
碁石を置こうとする虎松に、直久が後ろから声をかける。
虎松は直久の様子を伺いながら、また別の目に置こうとする。
「ん?そこですか?」
虎松が勝てるように直久が誘導しているのを見て、直虎は呆れた。
「うわー。虎松様はお強い!」
「五歳とは思えません!」
「さすが、ご初代様の生まれ変わりです!」
二人におだてられて、虎松はうれしそうに笑っている。
「全く勝負になっていないではないか!」
直虎は、思わず声を荒らげた。
直久と亥之助が慌てて頭を下げた。
「置くところを教えては何もならないではないか。これでは虎松が自分で考えようとしなくなる」
虎松は、二人の後ろに逃げ、ビクビクとおびえている。
「しかし、虎松様はまだ幼いですし」
「そのように手加減していては、いつまでたっても虎松は強くならない。今後は手加減はなしだ。わかったか!」
そう言い残して館に戻ると、六左衛門が迎えに来ていた。
「直虎様、駿府から但馬様が戻られています」
できれば顔を合わせたくない相手であるが、そう言ってはいられない。
「…顔を上げよ」
「なつから聞きました。百姓がくるようになったようで、よかったです」
「うん。まぁ…おかげさまでな」
「私は助言をしただけです。すべて殿の御力でしょう。他に変わった事はありませんか?」
「虎松が手習いをはじめたくらいかな」
六左衛門は横で普通にうなずいていた。
やはり六左衛門に種子島のことを伏せていたのは正解だった。
もし知っていたら、この瞬間顔に出てしまい、政次に勘付かれていただろう。
「駿府のほうは変わりはなかったか?」
すました様子で、政次に尋ねかえした。
「特には…」
いつもは鼻の効く家老も、今回は何も疑わず、政次はそのまま帰っていった。
「種子島ですが、本当にやるのですか?」
瀬戸村を歩きながら方久が言った。
「今回の件は、やけに渋っているな」
ギラギラと照りつける太陽の下、日差しに顔をしかめながら直虎が言った。
「うまくいくかどうか微妙ですし、もしうまくいっても、材料となる鉄はどこから入手するか、どう安く買ってくるか」
「それこそお前の腕の見せ所ではないか」
おだてていると、遠くの畑から角太郎が手を振り、直虎を呼ぶ声が聞こえた。
綿のすくすく育つ畑のほうに、急ぎ足で向かった。
そこでは、三河から井伊にやってきた百姓が、綿の育て方を指導していた。
「又吉は綿を育てていたことがあるらしくて」
移住者たちのお世話役をしてくれている甚兵衛が言った。
「それは頼りになるなぁ」
額に汗をにじませて働く百姓たちを眺めながら、直虎は方久に言った。
「この者たちをしっかりと守ってやらなければ。そのためには、戦の時に良い道具を持たせたいではないか」
「確かに、お気持ちはわかりますが…」
「よし! 又吉、私にも教えてくれ!」
直虎に気づいた又吉は、腰を抜かしそうなくらい驚き、ひれ伏した。
矢継ぎ早に質問を浴びせる直虎に、さらにあたふたと驚きを隠せない又吉を見て、甚兵衛たちは大声で笑った。
その後も多くの百姓たちが井伊谷にやってきては、みんなよく働いてくれた。
しかし、それとは逆に去っていく者もいたことに、直虎は全く気付かなかったのである。
虎松を守るしのと直虎の確執
虎松が寺に来なくなってしまったと、困り果てた様子で、昊天がやってきた。
「どうしてですか?」
祐椿尼も心配そうにしている。
「大変言いにくいのですが…直虎様、以前子供たちに手加減しないようにおっしゃいましたよね」
「切磋琢磨してこそ意味のある手習いでしょう」
直虎は間違ったことをしたつもりはさらさらなかったので少し心外であった。
「それはその通りなのですが…あれ以来みんな全く手加減しなくなってしまい、虎松様は何をやっても負けてばかりで…」
鍛錬では簡単に吹っ飛ばされ、鬼ごっこをすればずっと鬼になってしまう。
目に涙を浮かべながら碁盤を見つめる虎松の姿を、昊天は何度も見かけたと言う。
「そうして挙句の果てには来なくなってしまったのです」
祐椿尼は、言葉を失い困惑していた。
六左衛門は、自分の姿と重なるようで、ひどく同情していたが、直虎はあきれ果てて言葉も出ない。
「今後は虎松様の手習いは、指導者が屋敷に伺う形にして欲しいと、しの殿から言われました」
「まぁ、手習い自体を続けるつもりならば…」
情けをかけようとした祐椿尼を、直虎は「だめです!」と激しく制した。
「井伊の跡継ぎが、こんなに軟弱でどうするのですか!」
そう言い残すと、直虎はすぐに六左衛門を連れ、新野の屋敷へ向かった。
応対に出てきた桔梗が、虎松様の具合が良くないと、見え透いた嘘を口にした。
機嫌を損ねた直虎の代わりに、六左衛門が尋ねた。
「具合が良くないとはどういうことですか?」
「もし流行病で、直虎様にうつしたりしては大変ですのでと、しの様が…」
しびれを切らした直虎は、突然屋敷に上がり込んだ。
「直虎様!勝手なことをされては困ります」
後を追う桔梗に、見向きもせずに奥に入っていく。
「虎松!どこにいるのか、虎松!出てきなさい!」
「やめてください」と叫びながらしのが飛んできた。
ここだ!と思い開けた襖の先には、虎松がいた。
なんとそこで、あやめと桜に刺繍を習っていたのである。
手習いをさぼり、女子のように刺繍など…直虎はずかずかと部屋に入ると声を荒らげた。
「虎松!われは領主直虎。お前の後見である」
虎松はすかさず、あやめの背中に隠れた。
「出てこい。どうして隠れる。きちんと話をしよう」
身動きひとつせず固まっている虎松に、直虎は苛立ちを隠せなかった。
「聞こえないのか。出てこい!大将がこんなことでどうする!」
怒り心頭の直虎が、力いっぱい腕を引っ張ると、虎松は大声で泣き叫んだ。
「おい!泣くな!何もしてないだろう!おい!」
動揺する直虎に、しのが冷ややかに言った。
「もうよろしいですか?」
「わぁわぁわめくな!みっともない!」
冷静を装っていたしのの顔が引きつった。
「お前は井伊の跡継ぎとして皆んなを守っていかなければいけない。それが、この有様でどうする!」
「ならば、跡継ぎになどしてもらわなくて結構です!」
振り向くと、しのが物凄い形相でにらんでいた。
その隙に、虎松は今度は母親の背中に逃げ込んでしまった。
「虎松は弱虫でできの悪い子なので、あなた様のような立派な跡継ぎになど、なれないでしょう」
息子を守るように、しのが牙を剥く。
「し、しの殿…そんなことを言っているわけでは…」
動揺を隠せない直虎。
「そんなに虎松にご不満ならば、ご自分でお産みになればいいじゃないですか!」
しのが興奮のあまり、言ってはならない言葉を吐いてしまった。
周囲にいたものはハラハラしながら、ただ見守るしかできなかった。
「まったく、あつかましい。人の子供に文句ばかり言って。虎松、大丈夫?怖かったですね」
しのが何食わぬ顔で虎松を連れて行こうとすると、「悔しくないのか、虎松!」と、直虎が叫んだ。
厳しい言い方をしたのは申し訳なかったが、このままぬくぬくと守られて大人になってしまったら、自分の力では何もできない子になってしまう。
「無理だから、出来ないから、勝てないからと、ただ逃げるだけでいいのか!」
襖が勢いよく閉められ、直虎を突っぱねた。
悩んだ時の井戸
館でこの一件を聞いた祐椿尼は、大きなため息をついた。
「まったく、何をやっているのですか…」
すると、そばにいたたけが、くすくすと笑いながら言った。
「しかし、姫様の子供というのもいいですね。姫様の子供のお世話ならば、たけももうひとがんばりいたします」
「そんなことが許されるはずがないだろう!井伊の家は直親の子が継がなければならない!」
直虎のものすごい剣幕に空気が凍り付いた。
「ただの冗談でしょう」と祐椿尼がなだめた。
「たけ、申し訳なかった。少し頭を冷やしてきます」
そういうと、困ったときにいつも足の向く、龍潭寺の井戸へと向かった。
月明かりを頼りに、昔と変わらぬ草むらを歩いていると、少しずつ落ち着きを取り戻した。
井戸の手前で、誰かが頭から水をかぶっているのが見えて、直虎は立ち止まった。
そっと息を殺して近づくと、以前にも水場で出くわしていた男であった。
「お前、まだ井伊の領内にいたのか」
男は一瞬驚いたが、直虎に気づくと「おお!あの時の尼小僧様」と、目を丸くした。
「尼小僧?」
「どうしても尼様という感じがしなくて」
頭を振って水しぶきを飛ばす男の腰に、水筒がぶら下がっているのを見つけ、「それは私のものではないか!」と直虎が叫んだ。
「あ! つい、使い勝手が良くて。えへへ、申し訳ございません。返しますよ。返します。」
愛想と調子の良い、つかみどころのない男であった。
「旅をしていると言ってなかったか?」
「実は…南朝のある皇子がこの辺に埋めたという財宝を探してまして。聞いたことないですか?」
「本当にそんなものが井伊にあるのか! ?」
「とにかく、それを求めて、あてのない旅でございますよ」
それ以上話したくはなさそうだったため、直虎も深くは追求しなかった。
「まあ。お前はいいな。どこにでもいける…」
急に悩みを思い出し、直虎は憂鬱になった。
「それなら、一緒に行きますか?」
「私にはここでしなければならないことがある」
以前にも聞いたその言葉を耳にした瞬間、男は以前の会話を思い出し、急に「人手はどうなりました?」と言ってきた。
「おかげさまで、あの件は落着したのだが、今は手習いを嫌がる子供に手を焼いている。何をしても勝てないため、嫌になって逃げ出してしまったようだ」
男は一瞬考えたかと思うと、すぐに言った。
「とにかく何でもいいから一度勝たせてやるといいんじゃないですか。そうすれば勝つことの楽しさもわかるし、やればできるようになることもわかるでしょう」
「そうだ!それじゃ!」
曇っていた直虎の顔がみるみる晴れやかになっていった。
「またもや、恩にきる!旅のものよ、ありがとう」
直親の血を引く虎松
虎松は、夕食をあまり口にせず、自分の部屋にこもっては、碁盤をじっと見つめていた。
直虎の言葉が虎松の心で繰り返され、大きく膨らんでいた。
と、その時、虎松の部屋の戸に何かが当たる音がした。
「虎松!わたしだ、直虎だ。入るぞ」
ヒソヒソ声とともに、突然直虎が部屋に入ってきた。
慌てて来たのか、息を荒らげる直虎を前に、虎松は逃げ出すこともできず、ただその場にいた。
向かい合って座ると、直虎は突然、直親のことを語り始めた。
「私は、お前の父と幼なじみであった。お前の父は子供の頃、亀と呼ばれていたんだが、その名の通り亀のようにのんびりとした男の子であった」
虎松は、何一つ覚えのない父親の話に興味深々であった。
「とても優しいが、体も弱く、少し頼りないところがあった。自分の取り柄は笛しかないと、いつも言っていた」
「本当に?」
「本当だ。しかし、弓もうまかったし、知恵もある勇敢な男になった。どうしてだと思う?」
考え込む虎松をじっと見つめる直虎。
「…悔しかったから」そう言った虎松の手は、強く拳を握りこんでいた。
みんなに負けるたび、誰よりも悔しかったのだ。
「本当は一番強くなくてはいけないのに。できないといけないのに…」
虎松の本心を知った直虎の顔に笑みが戻った。
泣き虫だが、決して臆病者ではない!
やはり、直親の息子だ。
虎松の震える拳に自分の手をそっと重ね、「一緒に勝とう!虎松。一緒に戦おう。何かひとつでいい。皆を見返してやろう」と、直虎が言った瞬間、武装した新野家の家人が、部屋に流れ込んで来た。
「待て!わたしだ!直虎だ!」
「直虎様?!」
廊下に集まる人の中から、あやめが大声をあげ、泣いている息子に気付いたしのが部屋に飛び込んできた。
「虎松、大丈夫ですか? 何を言われたのですか?」
慌てる様子のしのを横目に、虎松は落ち着いた様子で言いのけた。
「母上、私は、勝ちたいです! 勝って、父上のようになりたいです!」
しのは驚き、虎松の顔を覗き込んだ。
涙で潤んだ瞳であったが、そのまなざしの奥には強い決意が現れていた。
「私も虎松を勝たせてやりたい。できないからといって諦めるように男になって欲しくないのだ。それは、井伊にとってだけではなく、虎松にとっても良くないことは、しの殿もわかっ
ておられるであろう」
しのは黙って聞いている。
「数日でいいから、虎松をわたしに預けてはくれないか」
しのは、落ち着いた様子で、必ず虎松を勝たせることを条件とした。
その条件にたじろぐ虎松の横で、直虎は腹を決めた。
「よしわかった! 虎松、やるぞ!! 今日から特訓開始だ!」
皆が部屋を去ると、早速五目並べの用意を始め、これで亥之助を負かしてやることを決めた。
虎松も真剣に碁盤に向かった。
「…取られるような気がするのです」
自分の部屋であやめと刺繍をしていたしのが口ました。
「虎松を…直親様の血を引くあの子を…」
「直虎様は、母親になることはできませんよ。もし、なれるとすれば、父親でしょう」
そう言った、あやめの言葉に、しのの手が止まった。
「父親?」
あやめは笑みを浮かべて言った。
「まるで、父親のようではないですか?」
虎松の成長
そしてついに決戦の日がやって来た。
虎松は緊張で固まっている。
特訓の間、うまくいかないことにかんしゃくを起こし、碁盤をひっくり返すこともあったが、直虎がじっと黙って待っていると、碁石を元に戻し、最後まで続けた。
途中で投げ出さなくなった。
それだけでも、十分成長が感じられる。
「虎松!とっておきの秘策を教えてやろう」
その秘策を聞くと、虎松は目を丸くした。
「よし!行くぞ!」
「はい!」
皆が見守る中、虎松と亥之助の一戦が始まった。
先手が有利だと政次に教えられた亥之助が、そそくさと先手を打った。
虎松も慎重に進めて行く。
なかなかの接戦であったが、亥之助の囲碁が先に五つ並んでしまった。
「よし!勝ったぞ!」
両手を挙げて喜ぶ亥之助と、うつむく虎松を、直虎は黙って見守っていた。
亥之助が気を使って、何かいい出そうとすると、虎松が顔を上げ、亥之助を睨みつけた。
「もう、一回!」
直虎は小さく拳を握った。
南渓は、直虎の策に気づき声を上げて笑った。
昔、とわが龍王丸に蹴鞠で勝つためにとった「勝つまでやめない」作戦である。
「もう一回だ!」と叫んだ虎松は、急いで準備した。
駆け寄って褒めてやりたい気持ちを抑えながら、直虎は嬉しそうにうなずいた。
しのは、遠くからこっそりとその様子を伺っている。
「しの殿。虎松も必死だし、このまま諦めなければ勝負はつかないということで、勝ったことにはしてもらえな…」
近づき声をかけた直虎の話を最後まで聞かず、しのはそそくさと昊天の元に歩いて行った。
「昊天様、わがままをお受けくださり、ありがとうございます。どうぞ、虎松が直親様の跡を継げる立派な大人になるように、鍛えてやってください」
直虎には目もくれず、しのが去って行くと、南渓が言った。
「直虎様には知らん顔ですな」
「それでいいのです。わたしは、ただの直親の代わり…戻って来てくれただけで十分ですよ」
一同が安堵し、緊張がとけた瞬間、直之がすごい勢いで駆け込んで来た。
「直虎様!すぐにお戻りください!」
「何かあったのか!」
「ここでは話せないので、とにかく急いでお戻りください!」
またも立ちはだかる政次
急いで館に戻るとそこには、方久と六左衛門、そして鍛冶屋の五平が、深妙な顔で並んでいた。
「盗まれてしまいました…見本も、作っていたものも全て…」
五平が報告するや否や、直虎は立ち上がり、井平に向かうと言った。
同時に立ち上がった直之の横で、六左衛門がきょとんとしていた。
と、その時!
「探しているものはこれではないですか?」
いつの間にか背後に政次が立っていた。
家人に木箱を二つ持たせている。
「確認しろ」
直虎の命令に、直之が駆け寄り、木箱を開けた。
案の定、中には種子島と完成間際の銃が入っていた。
怒りで声を震わせながら、直虎は言った。
「どうしてこれが、お前の元にあるのだ!盗んだのか!」
「このようなものを作らせているなんて…目付けとしては目を瞑ることはできません。また、謀反か何か企んでいたのではないですか?」
冷ややかな政次の言葉に、直虎は言葉を詰まらせた。
謀反など考えたこともなかったが、そのような疑いをかけられる恐れは想定しなければいけなかった。
その落ち度を政次に指摘されてしまった。
「謀反など微塵も企んではいない。もし戦になれば、これを手に今川の兵として戦う覚悟だ。そのための準備にすぎない!」
熱くなる直虎とは対照に、政次は冷静であった。
「謀反を企むものは皆口を揃えてそう言いますから、信じていただけるかどうか…」
直之が思わず刀に手をかけた。
「抜くな!抜いてはならぬ!」
「直虎様、助けて欲しければ、自らの意思で後見を降りてください」
「…汚いぞ!政次…」
奥歯を噛みしめる直虎に対して、政次は眉ひとつ動かさずにいた。
「このように脇の甘いあなたに井伊が守りきれるのか?そうは思えない。早く後見を降りてください。それが井伊のためであり、ご自分のためです」
固唾を飲んで見守る六左衛門と五平、今にも斬りかからんばかりに刀の柄を強く握りしめる直之、種子島から片時も目を離さない方久。
真っ向から睨み合う直虎と政次…
緊迫する空間に、荒げた息づかいだけが響いた。
以上、NHK大河ドラマおんな城主直虎17話のあらすじネタバレでした。
以下は実際に放送を見ての感想です。
おんな城主直虎17話の感想
種子島という新しい武器を手に入れ戦で役立ちそうですが、その武器にはお金もかかるようです。
自分たちで作ることにしましたが政次が勘付き、またまた面倒なことに。
政次との対立は続きそうですね。
刀鍛冶に頼み種子島を作ることに
前回、他の国から人手を集めて綿作りを始めた直虎。
今度は種子島と呼ばれる武器を手に入れましたね。
虎松は手習いを始めることになり寺へと連れて行かれましたが、どうやら人見知りの様子。
母親の背中に隠れてしまうなんて可愛らしいです。
早速、手に入れた種子島を使ってみることに。
この当時の銃は一発撃つだけでも手間がかかりますね。
しかし妖術のように敵をしとめる銃は重宝されることでしょう。
百姓でも使えるということで良いものを手に入れました。
良いものは高額なのが当たり前。
一つ10貫、更に弾薬などで維持費も高そうです。
経費を安くするため作ることにしましたが、これを量産できれば戦での井伊は無敵でしょう。
井平へ向かい刀鍛冶に銃を見せることに。
出来そうな感じに思いましたが銃の仕組みを理解して作ることは大変な技術のようです。
断られるのかと思いきや、やってみるという返事が返ってきました。
六左衛門は信用が無いようで内緒にすることに。
なんだか仲間外れのようで少しかわいそうですが仕方がありません。
負け続け、自信をなくす虎松
寿桂尼が倒れたことで新たに何かを考えている様子の政次。
甥の玄之から渡された丸い物体を見て何かを思いついたようです。
種子島の弾であることにすぐ気づき、直虎の元へ。
政次の威圧的な目線は怖いですね。
種子島の事を隠し通すつもりですが、勘付いてしまった政次はどう出るのでしょうか。
寺で子供と五目並べをする虎松ですが、答えをさりげなく教えてもらいながら勝っています。
まるでサラリーマンの接待を見ているようです。
それを見ていた直虎に、それでは勝負になっていないとビシッと指摘。
手加減は無用だと言われ、虎松はシュンとした表情で帰ってきました。
なんだか可哀想ですね。
百姓たちは綿作りに勤しみ、人をたくさん集めたおかげで綿作りの知識がある人材も来てくれました。
三年荒れ野のおかげで百姓たちのやる気も上がっているようです。
その一方で虎松は自信をなくし寺へ来なくなってしまいました。
直虎が手加減をするなと言ったせいで、みんなが手加減をやめ踏んだり蹴ったりの様子。
鍛錬では投げられ、鬼ごっこでは鬼ばかり、五目並べも全戦全敗。
それでは来たくなくなるのは当たり前です。
甘やかしたくない直虎は厳しく育てようとしますが、仮病まで使って逃げます。
屋敷に上がり込み説教をすると泣き出してしまいました。
出来ないことを無理にやれというのも酷な話。
直盛の娘である直虎が子供を産んで跡取りにすることは良いことだと思うのですが、そうはいきませんよね。
直虎は以前出会った旅人に井戸で再会しました。
財宝を探しているのだと言います。
その財宝があれば種子島が買えるのでしょうが。
虎松の事を相談すると、何かで勝たせてやってはどうかと提案されました。
一度でも成功体験ができれば自信につながるはず。
自信をなくした虎松は、悔しくないのかと言われ自分なりに葛藤しているようです。
父のように強くなるため再び寺へ
夜に虎松の部屋へ来た直虎は、父親の話をして聞かせました。
幼い頃の父親は亀と呼ばれ、亀のようにおっとりとして優しいが頼りなく、体が弱くて笛しか取り柄がなかったのだと。
しかし弓も上手く知恵もある肝の据わった頼もしい男に育ったことを教えます。
その話に虎松は、本当は誰よりも強くないといけない、出来ないといけないという自分の悔しい気持ちと同じなのだと感じたのでしょう。
虎松は自分の意志で勝ちたい父親のようになりたりと宣言しました。
自信の気持ちが強ければきっと強い男子に成長するはず。
しのも息子の意志の強さを知り直虎に任せることにしました。
五目並べの練習を始めますが、しのは虎松をとられるのではないかと不安でいるようです。
しかし母のように優しく包み込むのではなく父のように厳しく接し自分で立ち上がる強さを教えています。
直親の代わりに父親の役目を果たしているのですね。
いよいよ対決の日。
直虎は勝てる秘策をそっと教えました。
相手はいつも政次から五目並べを教えてもらっている玄之。
先手に理があると教えられていました。
やはり最初はあっけなく負けてしまいます。
負けたくないと強くなることを決めた虎松は、もう一度挑むことに。
そんな息子を影から見守っていたしのは、再び寺に虎松を託すことにしました。
直親の跡継ぎとして立派に成長することを願いたいですね。
そんな時、種子島が盗まれてしまった事を知らされます。
当然のごとく政次の手にありました。
目付として見過ごせないと謀反の疑いまでかけてきます。
後見を降りれば助けるとは、相変わらず政次は嫌な存在ですね。